＃ ページ29
◎やすださん
『俺が関ジャニに入るって決まったとき、俺の知んところでいろんな人が、いろんな噂を立ててた。』
晴人が関ジャニ∞に仮加入したのは、2005年の夏。晴人はまだ高校生で、その顔には少しあどけなさが残っていた。
『ジャニーさんのお気に入りやとか、内くんの劣化版やとか。良い噂から悪い噂まで、いろんなこと言われてた。』
入所してわずか3年で、しかも脱退が決まったメンバーの後に加入することになった晴人はすぐに批判の的になった。
どうにかしてその裏の顔を暴こうと、色んな人が晴人のことを興味本位で探ろうとした。
『俺は人一倍注目されやすいから、事務所の人はみんなマスコミから守ってくれるし、メンバーも気を遣ってくれた。』
僕たちももちろん、最初はただの後輩から突然同じグループになった晴人に対して戸惑いを隠せなかった。
ずっとこのグループでやっていく根性はあるのか、何も知らない無垢な少年に、厳しい言葉を投げかけたこともあった。
…でも、そんな必要はなかった。晴人はちゃんと、自分に求められていることが分かっている子だった。
『でももう、息苦しくなっちゃった。こんなことになることぐらい、最初からわかってたのに。アイドルになるって、こういうことやのに。』
晴人はそこまで話すと、一呼吸を置いて窓の外を見つめた。その先に何があるのか、今の僕にはわからなかった。
『ずっと、誰にも守られない遠い場所に行きたいって思ってた。そしたら、ここにたどり着いてた。』
僕らはずっと、勘違いしていた。
都合の悪いことからは目を背け、見せないようにしていた。彼を守る一心で、どんな批判にも一緒に立ち向かった。
でもそれは、本当に晴人のためになっていたのだろうか。外面だけで守っている気になって、晴人が今、何を思っているかを、置き去りにしていたのではないだろうか。
『ここは山の中やし、うるさい車の音も人の噂も聞こえへん。先生も優しいし、ここに入院してる人はみんな、俺と同じことで悩んでる。ここにおったら、俺はアイドルじゃなくて一人の人間として生きられる。』
『でもな、夜になったら不安になるねん。俺、関ジャニじゃなくなったらどうしようって。16歳からずっと関ジャニで、関ジャニとしての生き方しか知らんから。』
晴人の核心。
強さの裏に隠された、弱いこころがそこにはあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
donco(プロフ) - SEIさん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです〜！ (2021年1月30日 17時) (
レス) id: 29bbb7c934 (このIDを非表示/違反報告)
SEI(プロフ) - 更新お疲れ様です！とても読み応えのあるストーリーで、お気に入り登録しました！無理のないペースで、更新楽しみにしていますね！ (2021年1月26日 15時) (レス) id: fb017ffbce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さざ波 | 作成日時：2021年1月23日 1時
