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Aは僕の隣をせかせかと歩きながら駅に向かった。
別に急いでる風でもないから、多分元々歩くのが速いんだろう。
おかげで僕も助かる。昨日はわざとゆっくり歩いてたのか。
「そーいや、看護師なったんだねぇ。凄いじゃん」
「ありがと! 五条くんはそういや今何してるの?」
「ん−。高校教師」
「ええ? あの五条くんが教師?」
「何〜酷いなぁ。似合ってないって言いたいの?」
「似合ってないわけじゃないけど、想像つかないなぁ」
「それって似合ってないと一緒じゃん」
僕がさっきまでいたホームの反対の電車に乗り込む。
帰宅ラッシュを若干過ぎてはいるけど、2名分の座席が空いてるほどではない。
立っているのが好きだ、と言いたげに、Aは丁度来た電車に乗り込むと、さっさと奥側の扉付近に立った。
「最寄りどこ?」
「次の次」
「あ、そーなの? 僕の高校だわ」
「それじゃとんぼ返りになっちゃったね」
「いーのーいーの。気にしないで」
病院勤めだからか、彼女は勤務中にしてたマスクを身につけたまま。
折角の美人が勿体ない。マスク、外せばいいのに。
電車が最寄り駅を知らせた。
Aが向かったのは学校からほど遠くない一般的なマンションだった。
「さ、どうぞ入って」
「おじゃましまーす」
シンプルだけどどこか女らしい部屋だ。
まあまあ広い部屋に必要最低限の家具だけ。
隙だらけで、隙なんて全く無いAを良く表した1室。
「へー、綺麗にしてんねー」
「昨日慌てて片付けたからあんまり細部は見ないでね」
「予定あるって言ってたのに偉いねえ」
「掃除が予定だったなんて言ったら笑う?」
全くこの女性はどれだけ僕を翻弄させれば気が済むんだか。
今の発言のおかげで昨日僕に1000円だけ握らせてさっさと帰っていった彼女への苛立ちは遥か向こうへ消えたくらいだ。
「部屋、案内するね」と言われたので黙ってついていく。
ダイニング、脱衣所、お風呂、トイレ。それから寝室。
ちらりと見えた洗面台には、歯ブラシは一つだけかかっていた。
「何でも使っていいから。歯ブラシは使い捨てのがあるから、それ使ってね」
「彼氏は泊まりに来ないの?」
「…何で?」
「いや、男の気配が全く無いから。歯ブラシすら置いてないんだーっと思ってさ」
彼女はにこりと笑った。
また、あの意味深な微笑み。
僕にはまだその真意がわからない。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時