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テラス席に座って、彼女はアイスコーヒーを頼む。
僕も同じものを頼むことにする。
「はい、五条くん」
「え、何? くれるの?」
「うん。甘いもの好きだったでしょ?」
そう言って僕にガムシロップとミルクを差し出した目の前の牡丹はブラックのままストローをくわえた。
否定することも出来ず、僕は注文時に「シロップ2つ」と言っておいた分も合わせて、3つのガムシロップと2つのフレッシュをコーヒーに落とした。
嵩が増えたコーヒーをストローでぐるぐると混ぜる。沈殿するガムシロップ。
うん。甘い。
もう10年も昔の事なのに、いまだに僕が甘党だって事を覚えていてくれているのも、加えて。
「急だったのに、来てくれてありがとね」
「ぜーんぜん。僕も丁度君に会いたかったし」
「それは良かった」
中々今日呼び出した理由を言わない彼女。
僕から切り出す事は出来なかった。
言えば、このいつまでも続けていたい他愛ない会話が終わってしまうと思うから。
しかし僕の希望とは裏腹に、存外早く彼女は「あのね」とコーヒーから手を離した。
「どうしても、お願いがあるんだけど」
「お願いー? 何?」
「2週間、私と同居してほしい」
「……は?」普段の僕だったら言わない、驚き文句。
でも、彼女からそんな言葉が発せられるのなら話は別だ。
ずり落ちた僕のサングラスの様子を見て、追い打ちをかけるように彼女はつづけた。
「私の、浮気相手になってほしいの」
「…………えーとつまりそれはどういう事かな?」
「今の恋人と別れたくて、こうでもしないと別れてくれないから」
暫く考えて、落ち着きを取り戻すために甘いコーヒーを一気に飲み干す。
考えるためには糖分が必須だ。
うーん。よく分からない。
「…何で僕? ずっと会ってなかったじゃん」
「五条くん以外、仲いい男の人なんていないもん」
「はーーー……」
嘘つき!! 高校時代君がどれだけ男をたぶらかしてきたか。
冷静になれ、五条悟。
千載一遇の機会だ。何故なら僕は彼女をいまだに好きだから。
それにこんな面白そうな事、僕なら断るワケないじゃん。
「うん、いいよ! 一緒にいればいいんだよね?」
「……! ありがと、五条くん!」
「ま、面白そうだからねー。それじゃこれからよろしくね」
A。
サングラスを外して彼女に微笑みかけてみたけど、持ち前の僕の必殺技は全く効いていない様子だった。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時