プロローグ ページ1
「では、ここA。」
大学の教師はAを名指しし、『答えを言うように』と無言の合図をするがAは寝ているので気づかない。
「......名指しされていますけど？」
Aの隣にいた男は小声でAに囁く。
「...ん？...？」
うっすら目を開けて教師と目があう。教師はニヤニヤと笑いAを見つめる。
「あー...そういうこと」
全てを察したA。それはほんの15秒の出来事だった。
「それって」
Aが白紙のノートに計算をして答えを言い当てると教師は苦笑いをし喋り始めた。
「グラッツェ、助かったよ...」
隣の男にお礼を言うとチップを机に置いた。
「ごめん、1000リラでいい？今これしか持ち合わせてなくて。」
隣の男は置かれた1000リラに戸惑いながらAを見つめる。
「なんですか...このお金。」
「俺にアンタは何かをしてくれた、俺はアンタに何かをした、ただそれだけだ。このことを何て言うっけな〜ッ？ 物々交換、じゃなくて...何交換だ〜ッ？」
Aはある言葉が出なくて貧乏ゆすりの片足をリズムよく地面に打ちつけてイライラしていた。
「等価交換ですか？」
隣の男は痺れを切らしたようにある言葉を言った。
「そうだッ！それだ〜ッ！グラッツェ！」
子供のような無邪気な笑顔を無意識につくると男はため息のような物をついて教師の言葉に耳を使い始めた途端に授業の終わりの鐘が鳴った。
「...」
男は書き込んだノートや教科書、筆箱を片手で持てるようにまとめて立ち上がった。Aの目の前の机には自分のほとんど白紙のノートと1000リラが置かれていた。
「...貸しは今度返すとするよ、アンタ名前は？」
「...パンナコッタ・フーゴです、そういうあなたは？」
「A、よろしくな。」
立ち上がったフーゴと座ったままのAは握手をした。
「...見下ろしてすみませんが、こちらこそよろしくお願いします。」
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