あなたに夢中。Ⅰ (ページ5)

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福神漬の秘密（T.F）ページ5

Masaya side

Aちゃんは、なぜか俺らのことを全員“くん”付けで呼ぶ。

「晶哉く～ん！もうええで！」

Aちゃんがレッスン着に着替えるときはいつも別室に行ってくれるんやけど、今は僕とAちゃんしかおらんから、僕が外に出て着替え終わるのを待つことにした。

つい最近まではメンバーの目の前で着替えてたんやけど、耐えきれんくなった僕がお願いして別室に行ってもらうことにした。

申し訳ないなと思うけど、僕には刺激が強すぎる。リチャくん小島くんあたりは、もう何も言わんくなってたけど。

「ごめんなあ、ありがとう！小島くんやったら絶対居座ってたで」

誠也くんはまだわかるけど、めちゃくちゃ仲良いはずの小島くんですら「小島くん」。

みんな気にならへんのやろか。絶対気になってるはずやねんなあ。特に独占欲の強い誠也くんと大晴くんは。

佐「Aちゃんってなんで俺らのこと“くん”付けで呼ぶんですか？」

そう聞いてみると、Aちゃんはいつもの「やはははは！」という独特な笑い方をしながら、僕の腰あたりをポンポンと叩いた。

「それなあ、むかーし誰かにも聞かれてんけど、わからへんねん。なんかわたし、男の人のこと呼び捨てできひんくてさ」

佐「ええ、なんやそれ。じゃあさ、なんで誠也くんと大晴くんだけ下の名前なんですか？僕もやけど、僕は年下やからやんな」

「あーうん、晶哉くんは年下やし慕ってくれてる気がするからやね。誠也くんは『下の名前で呼んで！』って言うてきたからで、大晴くんは…」

そこまで言って、Aちゃんは口を閉じた。言いたくないのか、言えないのか。どっちやったとしても、この空気は…絶対なんかあったやん！

Aちゃんと大晴くんはファンの方から「福神漬」というコンビ名で呼ばれていて、いつか雑誌で話した大晴くんの好きな女の子のタイプが「完全にA」ということで、ほんまに付き合ってるんちゃうかと事務所内で噂になっていたこともある。

もしかして、ほんまに…。

「大晴くんはね～忘れてしもたけど、たぶん向こうから言うてきたんちゃう？」

あ、そろそろみんな戻ってくるよな。

そう言ってAちゃんは僕から離れて、テーブルの上に置いてあったいちご大福を食べながら柔軟を始める。あきらかにはぐらかされたけど、これはもうどう掘り下げても教えてくれへん気がした。

教えてくれへんのなら、もうあの人に聞くしかない。