あなたに夢中。Ⅰ (ページ32)

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Seiya side

Aが取り上げられてる『an・an』をコンビニで買って、いつもよりもめちゃくちゃ早く楽屋に行って

コソコソ読んだ。もうはっきり言うわ。コソコソ読んだ。

該当のページを開けば、俺らも見たことのない、肌・肌・肌。こんなん佐野には見せられへん。

Aの風呂上がりなんか、何回も見たことある。でも目の前に広がるのは、俺の知らん“女”やった。

末「なんか、『Party-Aholic』のMVのときとはまた全然ちゃうかったな」

「テーマが全然ちゃいますもん。編集者さんが、『意外とこういう素の瞬間にときめく男性も多いから』って。そうなんすか？」

イメージは、「友達から彼氏になった男の子とのお泊まり」やねんてさ。

Aがそう言って、自分が持ってきた『an・an』を見る。視線だけそっちに動かせば、たしかにAの細すぎず太すぎひんムチッとした体型と、テーマがめっちゃ合ってるかも。

あかん、なんか生々しいわ。

こういうときに思いだすのは、決まってあの夜のこと。

1年前。俺が初めて、Aの手や肩以外に触れた日のこと。

「誠也くんちのベッドでかい！サイコー！今日からお世話になります！」

末「いや今晩中に帰れ」

俺とAだけオフがかぶって、「どっか行こか」ってなったけど、外は豪雨で。

Aんちでタコパでもしよかーってなってたのに、「誠也くんち行きたいです！」って言うから迎えに行って家に招いた。

2人きりで家で遊ぶのなんて、別に何回もやってきた。ごはん食べたり、映画見たり、気がついたら雑魚寝してたり。

その日ももちろん、それは変わらへんはずやった。

「わたし、ちゅーしたこととかないんすよね。もうハタチ過ぎたのに」

やばいっすかね～、と笑うAの顔はほんのり赤くて。

それは「俺はおまえ送って行くから飲まんけど、飲んでええよ」と言った直後から遠慮なく飲んでいたチューハイのせいなんか

柄にもなく悩みを打ち明けて気恥ずかしかったのか、今になってもわからへん。

でもそのときの俺は、都合よく後者やと受け止めた。

末「したろか」

「あー、それはアリ」

末「アリなんや」

だってわたし、早くいろいろ経験してあんあんとかグラビアとかやりたいんですもん。

そんなことを言うから、まるで「芸の肥やし」と言うかのように、俺はAにキスをした。