恋煩いのドライブ（T.F） ページ29
Taisei side
ひさしぶりの1日オフ。昼まで寝て、大学の課題して、筋トレして…ってするつもりが、13時過ぎには車を運転していた。
隣には、ドライブスルーしたマクドのシェイクを飲みながら、ジャニーズWESTさんの『Into Your Eyes』を熱唱するA。
俺が迎えに来たときに「えっ今日おそろやん！」と言ったAの格好は、白いロンTにダボッとしたダメージデニムに黒のバケットハット。対して俺も、ほとんど同じ格好。
そこから大熱唱が始まったんやけど、Aの高すぎず低すぎひん伸びやかな歌声が心地よくて、ハモることなく無言で聞いていた。
「大晴くんと2人で遊ぶん、めっちゃひさしぶりやね」
歌い終わったAが、俺の口元にポテトを運びながら言う。
福「ほんまやなあ。なんかあったん？」
んー、とシェイクをすすりながら、どう答えようか考えてるみたいやけど、なんも言わんでもわかる。
たぶんなんかあったんやと思う。
何があったかは、正直見当もつかへん。でも、12時半頃に「遊べ！」と電話をかけてきたAの声は、ちょっと元気なくて。
もしかしたら話したくないかもしれへんけど、話してくれなわからんから、もうストレートに聞くことにした。
「大晴くんはさ」
福「おん」
「女友達っておる？」
女友達。ようは異性の友達ってことか。
福「まあ、ふつうくらいかな。高校の時の同級生とか。今はもうあんまり会わへんけど」
「そうやんねえ」
福「Aも、男友達多いほうやろ？」
「おん。女友達はほんまに信用できる2人くらいしかおらんけど、男友達はジャニーズとかあんま興味ないから、いっぱいいる」
福「男友達となんかあったん？」
「告白されてさあ。しかもシラフのときに」
福「は！？」
「大晴くんは、友達やって思ってた子に『好き』って言われたら、どう思う？」
俺は、何かを試されてるんか？
正直、Aがこの状況でこんなふうに悩むと思わへんかった。
いつも俺らの前で簡単に服脱いだり、俺らとほぼ変わらん格好してたり、すっぴんを平気で晒せたり。
後輩への指導もかなり厳しくて。でも的確に、論理的に叱るから尊敬されていて。気分のムラも見せへん。
女の子らしいところを表に出さへんAは、まわりの異性も自分のことを「女」として見てないって思ってて
予想外なことが起こっても、きっと「なに言うてんねん」って笑い飛ばすんやと思ってた。
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作者名：リリー | 作成日時：2021年6月4日 19時
