夏色なみだ【kota × kei】

＊ ページ26

＃こうた









初めて見る、慧の涙。


隠してるつもりなのか背中しか見えないんだけど、


たまに月明かりのせいで、頬に光る雫が見えちゃってるよ。


俺、慧がこんなに弱ってるなんて知らなかったよ




宏太「泣いてるの？」


慧「ちがうっ…」




見られてることにも気づいてなかったんだな


俺の声に驚いた慧は、振り返る。


そのせいで、泣き顔も見えた


……やっぱ、泣いてんじゃん




宏太「なんかあった？」


慧「…なんも、ねぇし」


宏太「俺に話してよ」


慧「、ほっとけよ」




慧は、かまってほしい時ほど人を遠ざける


なんて不器用なんだ。


自分の気持ちと正反対じゃないか




慧「……こわいんだ、…おれ」




沈黙を貫いていると、


耐えきれなくなって話し始める慧は、俺の思惑通り




慧「移植ってね、…誰かの命を、もらうことなの」


宏太「…うん」




慧「…もし、俺に適合した心臓が見つかって……でも、俺なんかより、ずっと、他の人がもらった方がいいと思ってる」


宏太「どうして…」




そんな苦しそうな声して、


なんで言わないんだ


……ほら、




慧「俺に、……生きる価値なんてないんだ」


宏太「…なんで、？」




俺に本音をぶつけてみろよ

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