頑張り屋さん ４

■： ページ4

side*宏太









出演者全員でのリハーサルの真っ最中


ステージには俺らはもちろん、他のアーティストさんも大勢並んでいる。


一通り動きの確認をしたあと、それぞれの調整に入った。




宏太「……大ちゃん、」


大貴「っ……へ？」


宏太「気になる？涼介のこと」


大貴「……まぁ」




普段ならスタッフさんの話を真剣な顔で聞いていたり、ほかのメンバーと変なことをしているのに


今日はやっぱり、心ここに在らずって感じで。




大貴「大丈夫かなぁ……って」




へへっと恥ずかしそうに頭を搔いた大ちゃんの気持ちは


要するに、一人で置いてきてしまった涼介のことが、心配で堪らないってことだ。









.



数分前




涼介「やだ。大丈夫、踊れる」


宏太「でも涼介の体、もう少し休めてからな」




嫌々と俺の腕を掴むその手は、肉付きが良くなくて、筋肉もないし、なにより細い。


そんな涼介の手を掴み、さすってやる。


手の甲の骨が浮き出ているのが、嫌でもわかるんだよ。




涼介「大丈夫だって……」


宏太「ここで無理したら本番出れなくなるよ？」




まだ下がっていない熱のせいか、潤んだ瞳で俺を見上げる。


反発しても折れない俺に腹を立てたのか、涼介は空の手をソファーに打ちつけた。




光「まぁまぁ、落ち着けよ。な？これでも飲んでひと息つこーぜ」


涼介「……ん」




そう言った光からマグカップを受け取り、膝の上で少し眺めたあと


両手で包んだそれを飲んだ。




宏太「大丈夫。聞いたことはちゃんと伝えるし、」




“すぐ戻ってくるから”


……と言うと、しぶしぶ頷いてくれた。

■：→←■：

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す