頑張り屋さん ３

■： ページ47

side*涼介









♪ 〜




俺以外の皆が、音に合わせて踊っていて


俺は、レッスン室の隅にただ座っている。




涼介「……。」




入院中、何度も聞いたリード曲。


久しぶりにダンスシューズを履いて、音に身を任せ、体が無意識に動く感覚。


……あぁ、やっと。って


そう……思ったのに。


俺の二ヶ月というブランクは、そう簡単には埋まらないから。




『一回通してみるから、バランス見ててよ』




休憩が終わって、立ち上がろうとしたら叩かれた肩。


まだ通しで確認するほどの段階でもないくせに、そんな言い訳を残して鏡の前に去っていった背中。


本来俺がいるはずの場所はぽっかりと空いていて、鏡にうつる自分が、どうしようもないくらいに情けない。




『ゆっくりでいいんだよ』


『自分のペースで治していこうね』




いろんな人から言われたそんな言葉が


今の俺には何の意味もない台詞でしかなくて。




涼介「くっ……そ……っ」




ぐしゃっとペットボトルが潰れた音がして、立ち上がる。


酸素スプレーが音を立てて転がった。


俺だって…………早く元に戻りたい。




侑李「涼介、大丈夫なの？」




不思議がるメンバーに指でグーサインを作り、


空いた場所を埋める。


曲が流れ始めた。

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