エーミール先生のマナー訓練 ページ49
「……で、次はマナー、と」
「はい。やはり女性は品格を求められますし」
そう言ってエーミール先生は立ち居振る舞いを教えてくれる。
一挙一動、細すぎるくらいに。
昼食の時間帯なのもあって、部屋まで運んでもらった昼食の食べ方まで、丁寧に修正される。
(もうエーミール先生が行ったらいいのでは……)
と思わせるほど、エーミール先生にはマナーが染み付いていた。
「エーミール先生〜……その会場で飲み食いしなかったらいいんじゃないでしょうか〜……」
情けなくそうこぼすと、エーミール先生は困ったように眉を下げる。
「でも多少は勧められると思いますし。……本当は、あまり口にして欲しくないんですけどね」
それは心底そう思ってるような、独り言にも似た声だった。
「じゃあ、次はその事についてお話しましょうか」
俺は引き続き、注意されたことに気をつけながら食べ進め、エーミール先生の話を聞く。
「まず、我々はいつ命を狙われてもおかしくありません。こういった会場では、食べ物や飲み物に毒が盛られるケースが多いんです」
毒って、本当にあるんだ……。
心做しか、きゅっと胃が縮こまる。…もういらね。
「Aさんの場合は相手と言語が合わないので、好意も悪意も気付きにくいと思います。私たちは、些細な変化で嚥下する前に気付けるんですが……」
エーミール先生はちらりと伺うように俺を見た。
「無理です!」
その返事に笑って、エーミール先生は励ますように続ける。
「さり気なく大先生が止めたり、ゾムさんが突然皿を奪ったりしたら毒があったって事なので、笑って流してください」
「へ、あ、はい……」
てか、毒か分かるなんてことある……?
ここの人たちやっぱり人間超えてんだな。
「寡黙な女性を演じるなら、笑みを湛えたまま大先生の少し後ろに隠れていればいいので大丈夫ですよ。あとは、さっき教えたマナーをお忘れなく」
「善処します……」
やば、あとで復習しとこう……。
***
一段落したところで、そうだ、とエーミール先生は思い出したように声を上げる。
「護身術の方は学べましたか?」
さっきまでとは一変して、楽しそうに尋ねてくるので、自然と心持ちも明るくなった。
「はい。ナイフの振り方だけ、一応」
「それで、ゾムさんは何と?」
「えっと、センスあるね〜みたいな」
「そうですか…!それなら安心ですね!」
「…そう、か……?」
頭の中では、帰りがけの口喧嘩を思い起こしていた。
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Lento(プロフ) - 南無南無さん» ひぇ…!ありがとうございます……!まだまだ続きますので、お楽しみ下さい♪(カメ) (2020年3月5日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - めっちゃおもろいやんけぇ…!もっと早くに知っていたら…くそう!無念!! (2020年2月25日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - 琴律さん» 全然大丈夫ですよw!めちゃめちゃ応援ありがとうございます!続きもよろしくお願いします♪(カメ) (2020年2月10日 19時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
琴律(プロフ) - すみません!!ほんまにすみません!!間違って低評価してしまいました!!!ほんまにすみません!!そんなこと一ミリも思っておりません!!応援してます!!もうめっちゃおu(( (2020年2月10日 18時) (レス) id: b4e402c9aa (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - 抹茶さん» コメント、応援ありがとうございます!続きもお楽しみください(≧∇≦)♪(カメ) (2020年2月10日 18時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lento & こい x他1人 | 作成日時:2019年11月4日 21時