【募集企画】加護の子、神の子【小説】

story23【桜庭樹】 ページ24

兄弟を探して何十分経っただろうか。

いや、もしかしたら何時間か経過したかもしれない。
それくらい長い時間探しても、空は居なかった。

どんよりと濁った雨雲を見上げ舌を打った。

母が言うに走っていった…らしいが。
あいつが走っていくとは到底思えない。

何があったんだ？

両親とも弟とも違う薄灰色の髪が揺れる。
真白い瞳を細め、一歩。歩を進める。

　「俺は、特別か。」

誰に言うでもない言葉は虚空に消え、
代わりに傘が、手に収まった。

…これが突然自分についた力だった。

神隠し。不可視。
存在するあらゆるものを隠す力。

空には
『俺の持ち物が減るから楽でいいぜ？』
なんて言っていたけど。

はは。

ごめんな、空。

乾いた笑いが木霊する。
俺は嘘吐いてたんだよ、空。

確かに俺の力は不可視の、神隠しの力だ。

しかしそんなお菓子などをしまっている訳じゃない。

世界中から集めた機関銃、ライフル、狙撃銃。

武器は一通り持ってる。
こんな風貌だからか、喧嘩は多いんだよ。


でもなぁ。

消えるんだ。


全部。

人も建物も全部。

触れるものは全部隠してしまう。
あぁ。存在が無くなるんだ。


　「なぁんて。
　 一人でやってて、寂しい奴。」

いつの間にか降り始めた雨。
傘を差して、俺はとぼとぼと空を探しに歩き出した。

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