STORY 82 ページ32
真っ直ぐに自分の気持ちを私へとぶつけてくるてつやさんを、もうこれ以上見つめていることができなかった。
耐えられずに顔を伏せ瞳を閉じたのと同時に、幾人かのてつやさんの家の使いの者達がこの部屋の前まで来るとてつやさんの両脇を掴み、抱えながら部屋を後にしようとした。
「ここにいたぞ!さぁ帰りましょう、もう祝言が始まってしまいます」
「やめろっ、離せ!A‼」
私の名を何度も何度も叫びながらてつやさんは抵抗し続ける。
「Aっ‼」
どうしたらいいの、いったいどうしたら…
私はいったい、どうしたいの…?
心に一瞬迷いが生じた時だった。
「しばゆー⁈」
ゆめまるさんが叫ぶ声に私が伏せていた顔を上げると、しばゆーさんがてつやさんを連れ去ろうとしている人へ掴みかかり拳を上げる。
「しばゆーさん⁈」
「行け、Aちゃん!早く‼」
しばゆーさんは何人かと揉み合いになりながら私に叫んだ。
「Aちゃんは…Aちゃんが一番に想う相手と幸せになれ‼」
「しばゆーさん…」
「Aちゃんが一番好きなのはてつやなんだろ⁈だったら早く行けっ‼」
戸惑い、その場から動けずにいると今度はゆめまるさんが。
「行け、Aちゃん!」
しばゆーさんと同じようにそう叫びながら、てつやさんの家の使いの人達へと掴みかかっていった。
「ゆめまるさん…」
「A、行きな」
「月子さん…でも…」
「いいから、さぁ」
私に優しく微笑んで月子さんが私の背中をそっと押した。
ゆっくりてつやさんに視線をやると、私に手を差し伸べる愛しい人。
「A、来い‼」
涙のせいで視界が霞む。
必死にそれが零れ落ちないように堪えて、私はてつやさんの下へと駆け出していた。
「てつやさんっ‼」
私はそのままその腕の中へと飛び込む。
そんな私をてつやさんは力強く受け止めてくれた。
「すげぇ綺麗だ、A」
顔を上げると目が合って、微笑んだてつやさんが私にそう言った。
私は何も言えないまま表情は泣き笑いになっていて…
「早く行け‼」
てつやさんを追いかけようとする使いの人達を、しばゆーさんとそして後から加わった月子さんと共に行く手を阻みながらゆめまるさんが大きく叫んだ。
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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時