STORY 79 ページ29
シロツメ草の丘で私はてつやさんに最後の別れを告げた。
てつやさんよりも先にその場所を後にした私は、一度も振り返ることなくりょうさんの待つ宿へと歩き続けた。
だけど後から後から溢れる涙だけはどうしても止めることが出来なかった。
宿の前まで帰って来ると私は慌てて涙を拭う、その時だった。
「A、どこへ行ってたんだ。探してたんだぞ」
宿の中からりょうさんが顔を出す。
私はその姿に少しだけ動揺してしまっていた。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、そこまで…」
「いいから、こっち来て」
そんな胸の内をりょうさんに気づかれたくなくて思わず俯いた私の手を取り、りょうさんは足早に歩き出した。
私は手を引かれるままその後をついていく。
ある部屋の前まで来るとりょうさんがその戸を大きく開けた。
「どう、すごいでしょ?」
私達の目の前にはそれはとても豪華で美しい、花嫁衣裳が飾られていた。
「すごい…」
思わずそう呟いていた。
りょうさんは嬉しそうな表情を浮かべ私の肩を抱くと自分の方へと引き寄せる。
「Aの為に作らせた。どう、気に入った?」
「でも、私なんかの為にこんな豪華な衣装…もったいないです」
「そんなことないよ。Aの為なら全然惜しくない。明日はこれを着て、俺のお嫁さんになってくれる?」
りょうさんの言葉に、そこに込められた大きな愛情に私はまた泣き出してしまっていた。
「どうして泣くんだよ、バカだなぁ」
そんな私をそっと抱きしめると優しく優しく髪を撫でてくれるりょうさんに、もう迷わず一生この人の傍にいようとこの時固く心に誓っていた。
明日はてつやさんの、そして私の祝言の日。
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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時