STORY 64 ページ14
りょうさんのそんな言葉に顔を上げた私の答えは既にもう決まっていた。
「産みます」
「A！」
はっきりとそう答えた私に月子さんが慌てた様子で口を開く。
「何言ってるの⁈あんた一人でどうやってその子育てるつもりなの？」
「貧しい思いをさせてしまうけど、親子二人でならなんとか暮らしていけると思います」
「馬鹿！そんなに甘くないわよ‼」
「分かってます…だけどどうしても私はこの子を産みたいんです！」
「分かってないわよあんたは！その子を産めばあんたもその子もただ苦労するだけなのよ？きっと妾の子だって、その子はそう言われるわ。そんな辛い思いをその子にさせるの⁉」
この子を産めばきっと、しなくてもいい苦労をかけてしまうだろう。
世間の好奇の目に晒すことになってしまう。
分かっている、だけどそれでも。
「この子には私が望んであなたを産んだんだって、そう話します」
てつやさんの血を分けたこの子を産みたい。
そんな私の思いをどうしても月子さんに分かってほしかった。
「あなたのお父さんをとても愛していたから。愛するお父さんの子供のあなたを私はどうしてもこの世に誕生させたかったんだって伝えたい」
「…もうどうなっても知らないからねっ」
月子さんはそんな私の話をじっと黙って聞いた後で、そう言い放って立ち上がるとそのまま部屋を出て行ってしまった。
「俺の子供って事にすればいいだろ」
今まで黙って月子さんと私の会話を聞いていたりょうさんがいきなりそんな事を言い出したから、私は思わずそちらに顔を向けたまま言葉を失う。
「え…」
「その子は俺の子供ってことにして、俺と一緒になったらいい」
それはつまり、他の人の子を身篭っている私のことをお嫁にしたいと。
そうりょうさんは言っているの…？
その時私は改めて知った。
りょうさんの懐の大きさを、その優しさを。
そんなりょうさんに胸が熱くなる、涙が零れそうになった。
だけどそんな申し出に私は静かに首を横に振る。
「A？」
「とても有難いことですけど、私にはもったいなくて…お受けする訳にはいきません」
「そう言うだろうとは思ってたけど、このままAをほっとく訳にはいかないんでね」
「りょうさん、私は…」
「Aがなんと言おうと今回だけは許さない。絶対に俺と一緒になってもらう」
その眼差しと表情が真剣なのだと、そう私に告げていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 298人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました！ (2021年4月27日 21時) (
レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます！この作品に出会えて良かったです！ (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました！ (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました！とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かえで
| 作成日時：2018年3月6日 17時
