エイリアンズ Vol.2【東海オンエア】

64. 過去には行けない未来は進む ページ14

撮影の合間にベランダに出て一度大きく伸びをする。
今日はとてもいい天気、降り注ぐ日差しは冬だというのに気持ちがいいほど温かかった。
ふと過去あった出来事を思い出す。
恋愛に関しては苦い思いしかない。
でも虫さんへの片思いは本当にいい経験だったと心から思う。
てつやが言ってたことが脳裏をよぎる。
あの時私がてつやに思いを打ち明けていたら、本当はどうなっていただろうと…

「なに一人でたそがれてんだよ」

ベランダのフェンスにもたれながら遠くを眺めていたら、軽く頭にげんこつされた。
顔を上げたらそれはタバコを吸いに出てきたゆめまるだった。

「いや、なんか色々昔あったこと思い出しちゃって…」
「どうした、何かあった？」
「ゆめまるも最近の私見てたら分かるでしょ、あり過ぎて混乱してるから頭の中整理してたの」
「あーなるほどねぇ」

タバコに火を点けて吸うと、一回煙を吐き出してからゆめまるが笑う。

「あのさー変なこと聞いてもいい？」
「なんだよ、俺が答えられる質問にしてくれよ」
「いやなんというか…例えばだよ、私が高校の頃てつやに告白してたとするじゃん、どうなったと思う？」
「なんだそれ、唐突過ぎて逆に困るな」
「…だよね、ごめんほんと変なこと聞いて」

慌てて話を変えようとしたんだけど、笑いながらもう一度タバコの煙を吐き出してゆめまるは言った。

「そりゃ、つきあってたんじゃないの」
「え？…そうかなぁ、絶対てつや茶化してうやむやにしそうだけどな」
「いやいや、どう見てもてつや、A好きだったやん」
「だって私以外の他の子のことかわいいって話ばっかりしてたじゃん」
「あいつなりの照れ隠しだろ、誰から見てもてつやの特別はあの頃も今もAだったよ」

そうなのかなぁ、どうしても納得いかないけど。
っていうのがどうやら顔に出てたらしく、ゆめまるがまた笑う。

「昔のことなんてどうでもいいやん、大事なのは今だろ」
「…頭では分かってるんだけどね、なんとなく最近あの時こうしてたらって考えちゃって」
「過去は変えられないからなぁ、でもこれからは自分次第でどうとでもなるんだからさ、もうそれでいいんじゃないの？」
「うん、そうだよね…」

ゆめまるの言う通りだ。
大事なのは、これからなんだよね。
また遠くを見つめる私の目の前に缶ビールが差し出された。

「飲むか」

いつの間にかゆめまるがビールを手にしていた。
私はそれを笑って受け取って、二人できれいな青空に乾杯した。

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