#39 ページ9
中間さんがご丁寧にも残してくれた名刺。
東京都から始まるその住所にともの職場はある。
「……」
もう来ないでって、それはどこまで有効？
職場まで追いかけてくるなんて、一歩間違えたらストーカーよな。わかってるよ。
「わかってるけど、」
ともとの空白の時間を埋めたい。
せめて兄弟に戻りたい。
俺とやなくても、墓参り行ってほしい。
やから、お墓の場所伝えるだけ…
「っあー！もう！！」
スマホだけ手にして家を飛び出す。
言い訳なんて、向かってる間に考えよう。
・
一度訪れて撃沈したホテルに、また来てる。
ともがいるかもしれないたくさんのホテルのうちの一つ、から、ともが働いているホテル、に認識が変わるだけで緊張にも似た震えが走った。
……違うな、また拒まれるのが怖いから。
一つ深呼吸をして自動ドアの前に立つ。
歴史も長いというそのホテルはクラシカルな雰囲気で、ゴテゴテと装飾がなされているわけでもないのに背筋が伸びる思いがする。
ホテルのシフトは、早番とか遅番とかの時間制になってるはず。
今日のともがどちらに当たるのかはわからないけど、早番の上がりの時間に合わせて来た。
ロビーのソファに当たり前のような顔をして座る。
声かけられへんように、あたかもここの宿泊客かのように。
「……あ」
この前のアイラインイケメン…。
いよいよ後ろめたくなって、見つかりませんようにと祈る。
視線を床に。掃除が行き届いているらしく、塵一つ見当たらない。
「神ちゃんせんぱーい！」
「のんちゃん、お客様もいるんやから静かに」
「はぁいすんません」
アイラインイケメンが駆け寄った先に、とも。
「もう上がり？」
「んー、申し送りしたらね。のんちゃんは？」
「俺ももう上がりです。ご飯行きましょ、先輩」
「えぇ？今日はだめ」
笑顔、昔と全然変わらへんなぁ。
頬に猫髭みたいな窪みができるのは、もうずっと前からのこと。
「何？はまださん？」
「今日は俺が夕食当番なの。当番すっぽかすわけにいかないでしょ？」
「三十過ぎたおっさん、そこまで世話焼かんでも」
「俺が好きでやってるの。いいからほら、バックヤード行きな」
ずいとアイラインイケメンを押すともをぼけーっと見守る。
あんなに考えた言い訳も、何もかもがしぼんでいった。
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ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん！コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年1月6日 16時
