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#37 ページ7

わかってた、わかってたよ。
十年も経ってその間、一度も帰ってこなかったことが何よりの証拠。
でもあんなに…、

「…やば、涙出てきた」

ごしごしと頬を拭う。
この心の痛みは多分、失恋と同じ痛み。
一方通行の思いがこんなにも辛いなんて知らなかった。
もう何度目かのため息を押し殺す。



布団に入っても、なかなか寝付けなかった。



仕事が始まるまでの時間がいっそ憎かった。
暇だと、とものことを考えてしまう。
すぐそこに、手を伸ばしたら会えるくらい近くに、いるから。
想像で10歳大人びたともを思い描かなくても、本当の彼が目に焼き付いてしまったから。

だから、スーパーの出口でまたばったりともの姿を見かけてた時は思わず電柱の影に隠れた。
ほんまに行動範囲ドンピシャ。
ネギが飛び出たエコバック、大事そうに抱えてさ。
隣の男に微笑みかける。

…いや、え?

「…誰やねんあいつ」
「お前さっきから何してるん?」

ほとんど同時。
背後から聞こえた声に思わず飛び上がった。

「ぅえ、っと、」
「自分、めちゃくちゃ怪しいで?あの男の子見てたやろ」
「あ、いや、その」
「ちょっと話聞かせてもらおうか」





連行、のち、尋問。
ともが知らん男といたショックなんて吹き飛…ばないけど、全然吹き飛んでないけど、とりあえず目の前の問題を処理するほかない。

「さっきの男の子…神山くんっていうんやけど、その子の上司の中間と申します」
「神山って言ってるんですか」

そこではたと気づいたのは、オカンの旧姓が神山だったこと。
全部、捨ててるかと思った。
オカンにももう会いたくないのかもしれへんって。

「言ってるっていうか、それが彼の名前やから」
「あ、隣のひょろっとした男の人やないですよね?」
「そう。そっちやなくて君が熱心に見つめてたきゅるんとした可愛らしい男の子」
「とものこと、変な目で見んなし…」

思わず呟くと、中間さんは訝しげに眉を顰める。

「あんた一体何者なん?神ちゃんのストーカー?」
「ちゃいます」

兄弟です、そう言いかけてやめた。
俺たちが兄弟だって誰も知らない街。
高校生の時、どうしても行きたかった土地。
このまま他人のふりして、ともと、

「……兄弟、です」

ともと?
叶うわけないのに、何を望んでるん。
そう我に帰って、やっぱり言った。

「兄弟?」
「はい。血ぃ繋がってないし、両親離婚したんでもしかしたら戸籍も…。けど、兄弟だった時期は確実にあります」

母方の苗字を名乗っている理由。
ともは離婚のこと、知ってたのかな。

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ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん!コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2023年1月6日 16時

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