#42 ページ12
今から？なんて聞き返すことはできなくて。
東京駅の人混みを縫うようにテキパキ歩くとものあとを追う。
身軽な荷物。
泊まる気はないって意思表示やろか？
「…高くなったね」
「ん？」
「新幹線代、前は一人14050円だったのに」
券売機を前にともはポツリと呟く。
思わず顔を上げると、ともの真っ直ぐな瞳と目があった。
「同じこと、考えてたよ。あの頃」
「……」
「だから大ちゃんが28100円って言った時、すぐわかった。わかって、気づかないふりした」
チケット取り忘れ防止のアラームがピー、ピー、としびれを切らしたように鳴る。
ともはそれを手に取ると、一枚俺に差し出した。
「あの時、二人で逃げてたらまた違った未来があったのかな」
「…あった、と思う。けど俺、ともがホテルで働いてるところ見て、間違ってなかったって思った。高校生二人で家出したって、ろくな未来、見えへんから…」
後悔なんて何度もした。
無理やり連れ去ってしまえばって思った。
いつか東京に行くなら、別にあの時行ったって、って。
「そうだね、うん、」
「でも、ずっとともに会いたいって思ってた」
ろくでもない未来でも、横にともがいればそれで幸せ。
あの時も今も、そんなこと言えへんけど。
・
新幹線特有の、あの少し浮いたような感覚に身を委ねる。
流れていく景色を見るでもなく眺めて、何度目かの瞬きをした。
「座れて良かったな」
「うん」
平日の昼間ということもあって、自由席でもさして不自由はしなかった。
都会を抜けて、少しずつあたたかみのあるのどかな地域に入っていく。
「昔に戻ったみたい。こっちで会ってから大ちゃんのこと、突き放してばっかりだったから」
「仕方ないことやってわかってるよ。実家帰ってこぉへんのに、連れ戻そうとしてるんやもん。拒否されて当然」
ともはぎこちなく頷く。
「オカン、なんで亡くなったん？」
「離婚してからずっと塞ぎ込んでて、…あ、待って離婚のことは」
「知ってる。……オトンから聞いた」
え、と溢れた声で自分の不機嫌に気づく。
慌てて咳払いをして、取り繕った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 465人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん！コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年1月6日 16時
