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#31 ページ1

2023年



「この度はお悔やみ申し上げます」
「恐れ入ります。生前は母がお世話になりました」

意外と人って集まるもんなんやなぁ。
不謹慎やけど、そんなことをぼんやり思った。
短大時代の友達、親戚と声をかければある程度は集まって、もしかしたらあの人もそれなりに慕われていたのかもしれないと思った。

「大毅くん、大きくなったねぇ」
「えっと…」
「あぁ、もう小さい時やから覚えてないか。お母さんの、従姉妹。西中島に住んでるおばちゃんって話、されたことない?」
「…!あきこさんですか!」
「そうそう」

オカンが元気やった頃をそのまま移したみたいな朗らかで優しい笑顔にホッとする。
こんな表情のオカン、もうずっとみてないけど。

結局、離婚の話を延長するにも限界で、ともの就職が決まった次の年には正式に離婚届が家に届いた。
それからのオカンはみるみるやつれて、俺が家にいない間はヘルパーさんに来てもらう始末。
何もない壁に向かって“こういちさん、こういちさん”って譫言のように呼びかけるオカンの姿は見ていて痛々しくて。

それでも長く持った方やと思う。
体自体は健康で、大きな病気もしなかったから。
オカンにとってはそれも生き地獄やったのかもしれない、と思うけど。

「でも偉かったねぇ。血も繋がってないのに、面倒見るのしんどかったでしょう?」

あきこさんの言葉に顔を上げる。

「え、」
「ん?いや、ちゃんと家族やってたんやなぁって。色々状態の話は聞いてたから、姉ちゃん見捨てられちゃうんじゃないかって心配で」
「あの、血が繋がってないって…どういうことですか?」

文脈からしてオカンと俺のこと。
やけど、そんな話聞いたこともなくて頭が追いつかない。

「話してなかったんか…。あのな、大毅くんはお父さんの連れ子やねん。ステップファミリーって言ったらわかる?お父さんは大毅くんを、お母さんは智洋くんをそれぞれ連れて結婚したんよ」
「、じゃあ俺とともって…」
「……うん」

あきこさんは言いにくそうに頷く。

「そう、ですか」

血の繋がっていない他人、それももう連絡がつかない。
法律上は兄弟だってわかっていても、ともと俺を繋ぐ糸がぷつりと切れてしまったように感じた。

「…智洋くんは?姿見えないけど」
「あ、っと…上京しちゃって。連絡はしたんですけど…」

嘘。
連絡先はわからないまま。
けど、オカンがいよいよってなってからはどうにか居場所がわからないか、興信所に依頼をかけた。

#32→



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ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん!コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2023年1月6日 16時

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