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#25 ページ25

一年というのは存外あっという間で。
特に、学校がなくなって働くばかりになったことも大きいのかもしれない。
学校行事で四季を感じ、体内時計がずれずに進んでいたんだと今更ありがたみに気づく。

春。慣れない長時間勤務を励ますように、学校帰りに必ず顔を出してくれた。ともは毎日やと太るからってココアの代わりにブラックのコーヒーをしかめっ面して飲んでた。

夏。コンビニで掛け持ちバイトを始めた。夕飯用にと昼とは違う顔ぶれのお弁当を作ってくれた。接客業やからってニラは入れてくれなかったけど。

秋。ともは大学に行かないと言った。"俺も卒業したら働く"と言ってきかないともに、初めてあの日の担任の気持ちが分かった気がした。

冬。バイトの休憩時間に廃棄寸前の肉まんを食べた。ともに触れたくなった。家に帰って思いきり抱き締めると、苦しいし冷たいって文句言いながらも嬉しそうに笑ってくれた。



「今日は式終わったらクラス会やろ?楽しんでくるんやで」
「うん。ごめんな、お弁当用意できひんくて」
「卒業式の日くらいさぼってや。ほんま、毎日ありがとう」

胸元にコサージュをつけたともの姿を見ると、一年前のことを思い出す。
式の後にバイトいれたら、ともにも桐山さんにもアホやとさんざん言われたっけ。

「大ちゃん、今までありがとう」
「うぁ、面と向かって言われると照れくさいわ」
「俺、大ちゃんのことほんまに好き。ほんまに…」
「何もう泣きそうな顔してんねん!」

抱きしめる。口づける。
あの日から一年半、飽きるほどしたのに未だに心がきゅってなる。

「じゃあ、行ってくる」
「おう、いってらっしゃい」





抜け出したいと思っていた地獄のような日々。
何度も新幹線のチケットを取ろうとしたし、卒業祝いって言ってそのまま俺らのこと誰も知らない街まで誘拐まがいのことしようかと思った。

それを思いとどまったのは、単に心の痛覚が麻痺したからかもしれない。
自分でもようわからへん。けど、いつからか俺の想像する未来は、この街でともと二人で暮らしている姿になった。
とももそう思ってると思ってた。
実際、ともが受けた大学は家から通えるところしかなかった。
そう。あんなにごねていたけど、最後は大学受けたんやで。

やから、とももそう、

そう思ってるって。





深夜のコンビニバイトを終えて家に帰る。
ともの晴れ姿を見た余韻をそのままに、今日は何度か、レジを打ち間違えた。

「ん?なんやこれ」

居間の電気をつける。
机の上には封筒と紙切れ。

『大ちゃん、今までありがとう。』
『俺は東京に行きます。』

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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時

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