Le miel. ２【JW 赤×緑】

Le lune de miel. ページ28

新婚さんの朝は早い。
今日は計算的に、俺が朝ごはんの当番やからそろそろ起きる時間。
ほんまは昨日今日と、引越しのために申請した有給やったのに…。
心地よい微睡の中、アルカンシェルの皆に謝罪する。

ごめんなさい。
家を出るどころか、もう多分ずっとここで暮らします。

宣言通り、手を繋ぐだけで止まらなかった昨夜。
まだ残った疲労感と、素肌に触れるタオルケットの感触が心地よくて、また夢の中に攫われかける。
…ってあかんあかん。
起きあがろうとして、それが簡単に叶わなくて。

約束通り、手、繋いでてくれたんや。

大毅の手を振り解きたくなくて、結局もう一度夢の世界の住人になる。



「おねぼうさん」

ちょん、て鼻の頭をつつかれて目を開いた。

「起きてたし…」
「ほう。それはそれは失礼しました」

おどけて見せた大毅は、すくっと起き上がる。

「今日、パン屋さんの開店日やねん。一緒行かん？」
「行く！お腹空いた」
「よっしゃ。じゃあまずはよだれを拭って…」
「…！？」

慌てて口元を拭うと、ケラケラ笑われた。

「うそうそ。ついてへんから笑」


・


「チョコデニッシュと、カスタードデニッシュは絶対買うやろ？俺、カレーパン食べたいなぁ」
「俺も食べたい」
「じゃあ半分こしよ。絶対目移りするもんな」

仲良く話しながら着いたコンビニの隣、開店祝いのお花に彩られたパン屋・おはまパンに、お客さんはいなかった。

「…？」
「あ、とも。これや」
「ん？…ご好評につき、本日午前分は、売り切れ…」

午後は13時から販売いたします、って。

「嘘やん…！開店初日、なめてた」
「ほんま。ともに昨日のうちに言って、二人で早起きすれば良かったわ」

…お腹空いた。
完全にパンの口になってるし。

「とも、ひもじいなぁ…」

すーっと大毅の手が俺のお腹をなでる。

「やめて！」
「なんでぇな。俺、外じゃいい子に待てできるで？」
「ちゃうって。太ったの。昨日見てわかったやろ？」
「んー…」

あ、こら、つまむな。

「えー？でもこんくらいの方が可愛くてええやん」
「うるさいなぁ。俺が嫌やねん。大毅の前では綺麗で居りたい」

俺の言葉に、大毅の顔がデレッデレになる。
余計に調子乗って、いたずらしかけてきそうな大毅の手首をぎゅっと掴んだ。

「また出直そや。何か食べて帰ろ」
「ぶー」

ほら、俺らがずっと店の前に立ってるから、お店の人出てきてもうたやん。

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