Le miel. ２【JW 赤×緑】

#43 ページ13

「んまっ！んーまっ！」

テレビの人みたいに、何種類もの“美味い”を連呼したシュウは嬉しそうに顔を綻ばせた。

「美味しい？」
「ん！」
「あー、アイス垂れてきてる」

シュウの隣に座った大毅はティッシュで机にこぼれたアイスを拭う。

「そういう大毅も」
「え？うぉ、あぶねっ」

チュッて垂れたアイスを吸う音が生々しい。

「シュウが真似するから、あんまり行儀悪いことしないで」
「はいはい、すんません」

へらっと肩をすくめて、大毅は自分のシューアイスに集中し始めた。

「シュウはどっちが好き？」
「んー、どっちも！」

俺らの皿にはそれぞれ二つのシューアイスが乗ってる。
一つは、アイスって言うよりミルクソルベに近い、夏向けのさっぱりしたもの。
もう一つは、カスタードクリームがベースになった濃厚なアイスに、シナモンとレーズンが入ったオリジナリティの強いもの。
どちらもうちの人気商品で、大毅のお気に入り。

「ふふ、シュウ、アイスクリームでひげみたいになってる」

おっきい口開けてかぶりついたかと思えば、唇の上に真っ白なアーチが浮かぶ。

「んはは、かわええ。シュウこっち向いて」

大毅がスマホを構える。
…と。
シュウを撮るために横を向いた大毅の、パジャマのタグが思い切り見えてて。

「だーいーき。服、裏表逆やで」

ピン、と丸見えのタグを引っ張ると大毅は照れたように笑った。

「全然気づかんかった、恥ずかしいわぁ」

きちんと畳んだはずやのに。ともごもご言い訳してる。

「トモとダイキ、仲直りしたん？」
「「え？」」

唐突な言葉。
ぺろっと髭を舐めたシュウは、さらに言葉を重ねた。

「朝、ダイキの服直してあげなかったけど、今はトモが直してたから」
「あー…、別に喧嘩してたわけちゃうで？」

シュウにバレるくらい、ぎこちなかったか。
多分、服云々ていうよりも雰囲気よな…。

「ふーん？」
「俺はシュウに襟直してもらえて嬉しかったよ？ともも、シュウにお手伝いしてほしいなーって思って言ったんやで」
「そうそう」
「仲ええから、ともはシューアイス俺に分けてくれるって言うし」
「あ、ちょっと！」

俺のアイス引ったくって笑う。
でも交換で返ってきたのは大毅の分。

「とも、シナモンの方が好きやろ？」

こういうところ、ずるくて嫌いになれへんわ。

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