検索窓
今日:2 hit、昨日:41 hit、合計:85,398 hit

#08 ページ8

「ただいまぁ」

大毅の控えめな声に意識が浮上する。
あかん、シュウ寝かしつけてそのまま寝てたわ。

「おかえり。ご飯温めるな」
「ええよ、安眠妨害してもうたし」
「たしかに寝てたけど…」

まだ21時。大人が寝るには早すぎる。

「疲れたやろ?」

ラップをしておいたご飯たちを電子レンジに入れながら大毅が尋ねる。

「ごめんな、巻き込んで。タイミングが悪すぎたことも、ごめん」

そんなん、大毅が好きやからいくらでもやるし、頑張れるのに。
そう、思ったままの言葉を伝えられないのが辛い。

「もう、それ何回目?ええって言ってるやん」

シュウも一日ええ子やったで。
そう伝えると、大毅の目が丸くなる。

「仲良うなったん?」
「え?」
「呼び方」
「あぁ、うん、シュウが呼び捨てでええよって」
「そっか。よかったわ」

大変やけど、楽しい。
大毅とは違って俺は一生子供を望めないから。
束の間の育児体験、やな。

「ベッド、三人で横になれるかな」
「うーん…シュウの寝相次第。今のところは小さくなって寝てたけど」
「そっか」

別れてからもずっと二人で寝てきた。
二人きり、夜だけ少し距離が付き合っていた頃に戻るような日もあった。
それももうおしまい。
昨日の夜のことはもうきっといつも通りすぎてもう思い出すことができない。

“おやすみ”

あぁ、でも手を繋いだよな、とか。
それってきっと、一昨日、俺がそう言ったからやな、とか。

「明日は俺送り迎え両方いけるよ。とも、遅番よな?」
「そう」
「風呂とか一人じゃ心細いわぁ」

わざとらしく肩をすくめるあざとい仕草。

「そう言われたって、仕事は休めません」
「ごめんごめん。笑」

ともー?と寝室から声がする。

「ほら、大毅がうるさいって。笑」

家だと一人で寝てるらしいけど、慣れない家じゃ不安なんやろう。
返事をしながらベッドに向かうと、完全に起き上がってるシュウの姿。

「ごめんごめん」
「トモ、寝ないん?」
「寝るよー」

こんなに懐いてくれるものか。
俺が寝転がれば、シュウも横になる。
伸ばしてきた手を握ると、安心したように目を閉じた。



ぽん、ぽん、って一定のリズムでお腹のあたりを叩くと、俺まで眠くなってくる。
このままじゃシュウのおかげで超健康人間になってまう。笑

「とも、」
「ん?」
「あしたの朝ごはん、なに?」
「何がええ?」
「すてーき」
「…それは無理やなぁ」

返ってきたのは穏やかな寝息。
新しい夜は、思ったよりも温かくて柔らかいものなのかもしれない。

#09→←#07



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (207 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
492人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ナナセ(プロフ) - りっつさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ床を転げ回っても大丈夫なところ(?)で閲覧してください!笑 (2021年8月31日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - ああもうすでに好きすぎて涙出そう。ここ、飯屋ですが床を転げ回りたいです。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナセ | 作成日時:2021年8月27日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。