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#11 ページ11

「ただいま」

ダイニングの電気がついているのが見える。
小さく深呼吸して、リビングへ続くドアを開けた。

“おかえり。冷蔵庫にサラダ入ってる。味噌汁は鍋の中”

大毅の少し不器用な文字。
あ、寝てるんや。
その事実にひどく安心した自分が居る。

期待も何も。
ずっと俺の方が大毅に溺れてた。
今やって。きっと俺の方が変な期待、してる。

「いただきます」

このまま時が止まったらいいのに。











…く、苦しい。
お腹の辺りが圧迫される感覚がして目を開く。

「あ!トモ起きた!」
「しゅう…おはよぉ…」

何故、お腹の上に。
戸惑いながら朝の挨拶をすると、私服に着替え、寝室に戻ってきた大毅が苦笑いする。

「今日土曜日やろ?ピクニック行こうって昨日の夜言うたら、張り切ってもうて」
「そっか、」

…起き上がれへん。

「ともも今日休みやんな?どう?一緒に」
「あー…うん、どうしよっかなぁ」

男二人で子供連れてたら浮くかな。
一番に思ったのは、人の目を気にする心配。

「トモも来る!」
「ふふ、シュウはともに来て欲しいんや?」
「うん!」

そんな、キラキラした瞳で見つめられると…。

「…男二人で行って大丈夫かな」
「もー、気にしなくてええのに。大丈夫。俺のこともでっかい子供やと思って。笑」

年上やのに、堂々とそんなこと言うなし。
そう思いながらも、口元が綻ぶのがわかる。

「よっしゃ!弁当作ろ!俺卵焼き作るから、とも唐揚げ作ってや♡」
「からあげ!!」
「ぅぐ…っ、ちょ、シュウ…お腹の上で跳ねんといて…!」



「ありがとな。せっかくの休みやのに」

二人で台所に立ってお弁当の支度をしてると、大毅が声をかけてきた。

「ううん。そんなん言うたら大毅やって、休みの日やし」
「俺はこういうのやりたいからええねん」
「…俺も同じやで。周りの目は気になるけど、シュウと仲良うしたいのは事実やし」
「え、俺は」
「それ真顔で言う…?」
「おん。なぁ、ともは俺のことどう思ってるん?」

お肉を揉んでいた手が止まる。

「どうって、それは…」

期待、させてるんやろか。
そんなもん振り切らなきゃ。わかってる、けど。

「三人、仲良く過ごせたらええと思ってるよ。乗りかかった船やし」
「うん」
「…うん。そう思って、ます」

大毅の真っ直ぐな視線から目を逸らす。
しまい込んだはずの本音が溢れそう。
ほら、やっぱり期待してるのは俺の方や。
今だって、大毅はまだ俺のこと好きでいてくれてるんやないかって、アホみたいな期待。

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ナナセ(プロフ) - りっつさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ床を転げ回っても大丈夫なところ(?)で閲覧してください!笑 (2021年8月31日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - ああもうすでに好きすぎて涙出そう。ここ、飯屋ですが床を転げ回りたいです。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年8月27日 11時

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