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母さんにそう言われ、俺は静かに息を呑む。そのまま、腕に抱く己と同じ血が流れる弟を見た。
俺とは違うにこやかな笑顔、ころころと変わる表情、柔らかな声色。俺とは全く似ていない⋯⋯けれど、この世でたった一人の俺の弟。
今も遼は、俺の顔をにこにこと笑いながら見ていた。そんな遼を見て、俺は母さんへと口を開く。
貴「ーーまぁ、それなりには。兄弟らしい会話もあまりしていないが、それでも多少は兄らしく話せたと思うよ」
母『!ふふっ、そう?それなら、良かったわ。それじゃあ、今からそっちに行くから待っててね?
そう言い残した後、短いリップ音とともに電話が切れる。相変わらずだな、と思いながらケータイをポケットに入れ直す。すると、今まで黙っていた遼が俺の服の袖をくいくいと引っ張った。
貴「ん?何だ、遼」
遼「あ、えっと、マミーとお電話してたの?」
貴「嗚呼、まぁな。母さん達が、今買い物終わったからこっちに合流するらしい」
遼「そ、そうなんだ。分かった」
そう言い終わると、もう一度ぽふ、と俺の胸に顔を預けて擦り寄ってくる遼。⋯⋯よくよく、母さんに言われてみたが確かに俺は遼とはあまり話したりはしなかったかも知れない。
俺は大抵、家にある訓練場に篭っている為一日を全てそこで過ごす。その為、遼と顔を合わせるのは昼か夜のどちらかだ。
⋯⋯こんな事、普通の家庭ではあり得ないんだろうな。今までの自分の行動を振り返り、兄弟らしい会話と接し方。それを、よくよく考えてみる。
本で読んだり、他人から聞く兄弟の在り方は知っている。互いに互いを高め合うライバルであり、兄は弟を助け守るのだと。⋯⋯だが、それを聞く限り俺はソレを弟たる遼に与えたことも接したことも一度すら無い。
ここまで考えると、自分がどれだけ冷たく薄情な人間なのかが分かる。俺は家族に対しての情は、それなりにあると思っている。それに、守るべきだということも分かる。
だからこそ、コレから遼が成長していく過程で俺がどう接していくべきなのか今一度考えてみる方が良さそうだ。
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mikitty(プロフ) - この小説、好きです! (2022年6月10日 21時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千本桜 | 作成日時:2022年6月8日 20時