王子様に恋してーRyota.Kー

story 43 ー 涼太 side ー ページ43

ー 涼太 side ー


「涼太、帰り支度早ない？」

ライブが終わって
いつでも会場を後にする準備完了。

後ろから龍友くんの声がするけど、俺の心は今それどころじゃなくて。


涼「この後、何かあったっけ？」

じっとしていられなくて、やる事がまだあるかマネージャーに確認。

マ「もう何もないですけど、車が来るまでもう少しかかりそうです」


俺らを家まで送迎してくれる車待ち。




涼「俺だけ早く帰る事出来ないかな？」

待つ為一度座ったけど、やっぱり落ち着いていられない。


タクシーのが早いか確認してみます、とマネージャーが電話をかけてくれる。



別に今更慌てたって

もう、どうにもならない。



分かっているのに、ただ今


たった一人の人に会いたくて…




今日、ステージに立った瞬間


すぐに飛び込んできたのは

俺を見つめる、キラキラとした瞳。


あの頃と変わらない。


沢山のファンの人達が
そういう目で見てくれていたはずなのに


俺の心は、その人にだけ反応する。




本当に、ずっとファンで居てくれたんだ…



その事が嬉しくて


あ、俺

今泣きそう…



始まったばっかなのに、俺の感情はピークを迎えて




ステージを飛び越えて抱きしめに行きたいのに、出来ないのがもどかしいなんて





今更気付く、自分の気持ち。



あの時の俺は

Aちゃんの言葉を

信じる強さも
受け入れる余裕もなくて

突き放すしか出来なかった。


他の誰かに「好き」と言われても
どこか信じる事が出来なくて…



でも

Aちゃんの「好き」は

なぜか信じられるんだ…。



だから

まだ間に合うって、信じたい。



送迎車より先に着いたタクシーに乗り込み
行き先を告げる。



一年間、ずっと遠ざけていた場所へ…






．









カランカラン

ドアを開けると
聞き慣れたベルの音。


よくここに通っていた時の事を思い出す。

辛い記憶しか思い出せないと思っていたのに…
今、ふと頭に浮かんだのは

『いらっしゃいませー』

そう言ってキラキラした瞳で俺を見る
Aちゃんの笑顔。







．







「いらっしゃいませ」

お店の中には、マスター1人。


涼「ご無沙汰しています…」

ぺこっと頭を下げる。



「あっ、片寄さん！お久しぶりですね」


マスターは俺の事を覚えていてくれて
少し雑談をした後、本題を切り出す。







涼「Aちゃんは…？」ー

story 44→←story 42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す