知り合い(仮) . (ページ15)

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『はい。どちら様ですか。』

こんな夜に電話かけてくるなんて絶対出たらダメな人

分かってたけど酔っ払ってて電話に出てしまった。

「バイト、やめたんですか？」

あ、わたし酔っ払っててもちゃんとオタクだ。

『はい、いろいろ諸事情があって先日。』

「なら、やめたバイト先にどんな用事で男と？」

『え？』

「俺今日たまたま飲みにきてたんで、Aさんのこと見ましたよ。」

『奥の個室ですか？』

「はい。いつもの部屋です。だし巻きも。」

『だし巻き、そんなに好きなんですか？』

「Aさんがおすすめって言うからですよ。」

『え？』

「でも今日、知らない男ともだし巻き食べてた。」

『私の好きなものですから。』

「あのイケメン誰ですか？彼氏？」

『いえ、元彼です。』

「より戻そうって話ですか？」

『いえ、元彼にはもう彼女さんがいますから。』

「浮気ですか？」

『いえ、お友達として、ヤケ酒です。』

「嫌なこと、あったんですか？」

『宮近さんには関係ない事ですから。』

「そうですね。

　Aさん。後ろ、向いてください。」

『え？』

後ろを向くと、目があって電話が切れた。

『何してるんですか、こんなとこで。』

「電話かけた時に電車の音したから、来てみました。」

『そういうことではなくて。みなさんご一緒だったんじゃないんですか？』

「みんな酔っ払ってるんで、適当に抜けてきました。」

『すぐ戻ってください。週刊誌とか、色々あるでしょ。』

「大丈夫、マスクとサングラスと帽子も持ってるんで(笑)」

そう言って笑う宮近さんはお酒の匂いがした。

『飲み過ぎです。』

「んー俺もヤケ酒。」

『宮近さんも嫌なこと、あったんですか？』

最近テレビでよく見るし、嫌なことたくさんあるよね。

「俺、Aさんと仲良くないけど、知らない男と2人は嫌です。」

『宮近さん、相当酔っ払ってますね。』

酔っ払ってる、そう言い聞かせないと耐えられない気がした。

「酔ってないです。」

『お酒臭いですよ。』

「俺、Aさんのこと気になります。バイトやめたなんて聞いてない。」

『宮近さんに言う必要、ないですよね。』

一瞬ムスっとした顔をした宮近さんは

「はい、これ。ちゃんと連絡ください。」

私の携帯を奪って連絡先を登録した。