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試合に負けた。
Aっちになんていじられるんだろうなと考えながら携帯を握っていた、恐らくそろそろ電話がかかってくるはず。
なんて考えていれば着信音が鳴る、急いで出れば予想通りAっちの声が聞こえた。試合前に会った辺りで待っている、と言うものだから前を歩いていた先輩達に一言だけ伝えて走って向かった。
待っていると言った場所に彼女は立っていた、一日にこうして何度も会えるのが嬉しくて思わず急ぎ足でそちらに向かった。
声を掛ければこちらに気がつく彼女は携帯を閉じて、近付いて来た俺に向かってまず腹へ一撃を入れた。
『アンタ足やってんのに走るな!』
「へ、へへ…ごめん、Aっち負けちゃったっス」
『謝る相手違うでしょーが、謝んのは私じゃなくて海常の先輩方に!
ったく…ずっとヒヤヒヤした試合だったわよ』
頭を押えてヤレヤレ、といった仕草をする彼女は俺の事をじっと見つめてくる。こうも見つめられるのは久々でなんだかむず痒くなって「なんスか?」と少し目をそらす。
『お疲れ様、りょーくん
貴方が頑張ってたのよくわかった。それに海常の先輩方にいっぱい可愛がられてる事もね。
こういうのは上から目線かもしれないけど、凄く成長したわね』
「…え、Aっち俺の事今」
『私が一方的に雑に扱ってたけど、仲直り
今までいっぱい振り回してごめ』
彼女が言葉を言い終わる前に覆い被さるように抱きしめてしまった。うれしい気持ちが溢れて止まらなくて。
止まっていた涙もまた溢れ出して。彼女は「やっぱり成長してなかったかしら」なんて軽く笑いながら背中を優しく撫でてくれる。
「嬉しい…大好きっス」
『…やっぱりまだ子供ね』
「Aっちと一緒に居れるなら子供でもいいっス」
『アハハ、何それ』
後ろの方から先輩の声が聞こえてきて急いで涙拭いてAっちから離れた。森山先輩が俺とAっちを交互に指さして「彼氏ってお前!?」と驚いていた。
「俺とAっちは幼馴染っス今は!」
『何よ今はって…このバカ無理しないように可愛がってあげてください。あ、やば、りょーくん私他の人と合流しないとだからもう行くね
あ、電話番号登録しといてもいいけどしつこくかけてきたら着拒するからね』
と言って急ぎ足で外へと向かって行った。
ん?登録?
不思議に思って着歴を確認すれば、確かに試合前と先程来た電話の番号が違った。
その場で飛び跳ねたくなる衝動を抑え、電話帳へと登録をした。
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作者名:杜若 | 作成日時:2024年2月12日 23時