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雅「一回……全部吐き出して
そんで ちゃんと息しなきゃ」
ただただ溢れる二宮の涙
相葉はそれを親指で拭い、抱き寄せると
促すように
背を撫でた
.
絶望から這い出るために
必要なのは 時間じゃなくて
恐らく声にする事なのだと___
それがどんな思いであろうと
声にし……吐き出す事なのだと
先程の櫻井を見て
相葉はそう感じていた
.
雅「……あそこに戻るのが、そんなに怖い?
また闘わなきゃなんないのが……」
和「…… …違…う」
雅「…… じゃあ…… ショックだった?
大ちゃんが ああした事が……」
和「………」
雅「俺はね、今の……両方ともかな」
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抱きしめ、背を撫で……
二宮の呼吸を鎮めながら
改めて見つめる湖底は
変わらず深く……遠く揺らいで……
すると、か細い声が
吐息の中に混じり聞こえた
.
和「…… … 俺じゃ ない…」
雅「…え?」
和「…… 諦めてん…のは… … 俺じゃない……
アイツが…、…
アイツ自身が… …決めたんだ
もう… …終わりだっ て… …
それでいい…って … 決めやがっ… … … 」
言いながら
再び固く縮まっていく背を
相葉は絶えず宥め続ける
雅「……うん」
和「… …… ダメ なんだって、それじゃ……
……いくら、俺らが… 行ったところで
結局… …アイツは…
まだ一人だと 思っ… …
ちっとも 変わってなかった…
前の あの頃のまんま……
俺じゃ結局……何も 変えてやれなかっ… …」
その言葉に
相葉も思わず胸が詰まって
見ていた湖底も 滲み始める
.
思い出す……
出会った頃の大野は
気付けばいつも人から離れ
演習場の砂に……ポツンと一つ、影を伸ばしていた
でもいつからか二宮が
そこにもう一つ、影を並べて……
やがて腕を引き
こちら側へと 呼び寄せて……
それでも何故か 馴染みたがらず
ふと消えてしまう大野を
その度に探し
見つけ……仕方ないなぁと笑いながら
何度も…
それこそ 何度でも……
二宮は 呼び戻しに行っていた
その二人を…… ずっと見てきた
.
雅「… … そんな事ない
違うよニノ…… だって大ちゃんは
あんなにお前を頼ってたじゃん」
和「だったらもっと……しがみついてでも
どうなろうと……
出てくりゃ良かっ たんだ
俺は…… 何だかんだ言ったって……
最後は一緒に……アイツが…望んで、こっちに来るって……信じて…のに …」
シャッターの音が
二宮の声に甦り…… 胸が痛んだ
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ほうれん草(プロフ) - 初めまして!どうしても気持ちを伝えたくて会員登録しました!現在大学生なのですが、小学校の頃から何度も読み返して楽しませていただいています…!TEMPESTは間違いなく1番好きなケータイ小説です。これからも楽しみにしています!更新ありがとうございます! (2020年11月23日 3時) (レス) id: f0434b5d68 (このIDを非表示/違反報告)
ペコちゃん - 毎回ハラハラしながら見させてもらってます。リーダーのその後が気になって仕方がありませんっ!更新首を長〜くして待ってます! (2020年11月12日 20時) (レス) id: 726f26b2c6 (このIDを非表示/違反報告)
めいそん(プロフ) - TEMPESTで見させてもらった景色が何年経っても忘れられず、ふとまた覗きに来てみたら更新されていてびっくりしました!一気に読み返してしまいました。またこの世界の続きが見られると思うととても嬉しいです。更新ありがとうございます! (2020年9月13日 20時) (レス) id: 3acd423d16 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - サハラさんの更新通知がとても嬉しいです!サハラさんが描く5人が大好きです。是非結末まで見届けたいと思います。 (2020年9月6日 14時) (レス) id: d6343d5c60 (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - サハラさん、更新ありがとうございます。美しい風景描写にうっとりします。本当に大好きです。余韻に浸りながら次の更新をゆっくり待ってます。 (2020年9月1日 18時) (レス) id: 481bc4ee81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サハラ
作成日時:2018年4月13日 12時