Little Sugar ． (ページ17)

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「ごめん、待った？」
　「ううん、全然…」

　カップルかっていう会話を交わして顔を上げると、新くんが手を振った。シンプルな黒のシャツに紺のコート。

　……派手じゃないのになんかすごく、かっこいい。

　「伏舞さん？」
　「へ、あ、ごめん、…」

　新くんが茶化すように「もしかして見惚れてた？」と笑みを浮かべる。

　優しいけどどこか意地悪なその笑顔に頷くと、新くんはきょとんとした。それから本気で予想外だったのか、「えへへ、ありがとう」と呟く。

　本を選びに行く日は、お互いに勘違いされないように穴場の本屋さんに行くことになった。私がいつも行く、同校の生徒があまりいない場所。

　新くんは病気ものの小説コーナーをぐるぐると周りながら、何度か本を手に取る。

　じっくり吟味するようにめくる姿を横目に、私もまだ読んだことない本を手に取ってはめくり始める。

　新くんが恋愛に興味を持つ姿は、初めて見た気がする。我関せずだけど、恋話は聞く側らしいし。現に今密かにみんなが新くんを見ていることすら気づいてなさそうだし。

　……気付いてない、ならチャンスかな？

　バニラフラペチーノを飲んだあの公園。あの日みたいに2人で並んでブランコに座る。

　「伏舞さん、彼氏いるの？」

　唐突に聞かれて、慌てて本に栞を挟むと「え⁉︎」と間抜けな声を出す。

　「カップル目線でこういうこと憧れるのかなって言う興味」
　「な、なるほど…」

　正直いたことない、と言いそうになって留まった。

……新くんは、いるのかな。

　気になってやまなくなり、口を開く。

　「新くんは居るの？」

　スムーズに発したはずの言葉が、少し強張る。

　「、……俺は…」
　「新？」

　新くんが口を開いた瞬間飛び込んできた声の主を振り返る。

　そこには綺麗な女の人が立っていた。