【ホークス】空を飛びたい 5

162 覆せない『設定』 ページ3

貴女side





あの役員は、私を殴って気絶させた後に
もう一度記憶を消そうと試みたのだ



それでも、私は直前で記憶細胞を停止させ

結果として…
何も記憶を奪われはしなかった。




相澤さんから話を聞く分には


私は階段から転落して、医師が調べた所

『多少の記憶障害』が起こった可能性がある


…だそうだ。



役員と医師はきっとグルで
そういう『設定』を作り出したのだろう。

携帯も落下した時にデータもろとも破損して
新品に取り替えられていたのも

位置を変えてつけていたはずのリングが
消えているのも、きっとそういうことだ


ここで騙されておかなければ私はまた狙われる



本当に、彼が消えてしまう。





ならば







医師「…あなたの職業、家族構成及び恋人又は配偶者の有無も含めて教えて下さい」





貴「…雄英高校正規教員、医師そしてヒーロー

家族構成は父1人。配偶者も恋人も居ません」




その設定に乗るしかない。









相澤さんが検査結果を聞きに行っている間に
病室にあの役員が来た。



役員「…どこまでも卑怯な女だな」


貴「貴方こそね


…大丈夫です。私は今後一切

あなた方の邪魔も、彼の邪魔もしませんから」



そう言い返すと

怪訝そうな顔をして、彼は退室した。





私が彼のために動ける事は、もう無いだろう





最後に一度だけ、顔を見て話がしたかった
そんな後悔は言い始めたら幾らでもあるけれど








とにかく信じ続けよう


彼の明るい未来を。




夕陽に染まる、広い空を眺めていると
いつの間にか頰を伝っていた涙は乾いていた。

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