【爆豪勝己】仮面王女の鎖

25. 実現不可能 ページ27

【城内にて】









翌日になると、ライズはまるで
何事も無かったかのようにいつも通りだった。



きっと本人からすれば
特に深い意味もなかったのだろう。



そしてまた、私の生活も元に戻る。


この部屋の中で…本を読んだり、演奏したり。

だけどそれに加えて…


どうしても窓を見てしまうようになった。
まるでこの城に来た頃の私のように。



「ここから…出られたらいいのに」


思わず呟いてしまい、反射的に周りを確認する。
もちろん誰も居ないんだろうけど

私は怖くてどうしても周りを窺ってしまう。

そして誰も居ない事を確認しては安心するのだ。




…もう2度と1人で街を歩くことは
許されないのだろう。



頭に残っているのは彼の…

赤くて鋭くて、まっすぐな目だった。
ずっと見つめていたら引き込まれそうだった。


いや、もう引き込まれていたのかもしれない。


だから…ライズが迎えに来た時、本当は
帰りたくなかったし、それに



『また会えたら』なんていう実現しない希望を
彼に伝えてしまったのだろう。






実現しないと分かっているのに、未だに私は
会いたいと思ってしまっている。



お話しできなくても良い。だけどもう1度
彼の姿を目に焼き付けておきたい。



なぜだか分からないけれど私には

彼がとても輝いて見えたから。




私は、深いため息をついた。

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