【五条悟】ブラックスマイル

25. 誰かに背中を ページ27

【伏黒side】



『恵』

「はい」



箸と茶碗を置いて、こちらを向き直す先生は
穏やかに笑っていた。

俺の思い込みかもしれないが

それは今までのような嘘めいた笑いでは無く
自然な笑顔に見える。


『聞いた感じ禪院家の血筋みたいだけど…

君は分からないけどお姉さんは
あの家に行けばきっと辛い思いをしていた。

賭けてもいい。術式も刻まれていない女なんて
禪院では道具以下の扱いしかされない。



恵の選択は、お姉さんを救っていたんだよ。

だから、恵の判断は正しかった。
辛かったはずなのに…本当に偉かったね』



心から何かがストンと落ちて、軽くなった
そんな気がした。


『禪院に行けば確実に彼女は幸せになれない』


あの時も、五条先生にそう言われた。


それでも

俺はこれで良かったのか

津美紀は本当に幸せになれるのか

もっともっと辛い目に合うんじゃないか



寝たきりの津美紀を見るたびに
そんな考えが頭をよぎっていたんだ。


『信じてもらえるか分からないけど
気休めじゃなくて、本当に私はそう思ってる』


「それくらい分かってます」


彼女の言葉が
何故こんなに重みがあって、温かいのか

俺には分からない。だけど今は


「…ありがとうございます」


うん、と微笑む先生。

不意に出そうになった涙を誤魔化すように
味噌汁をすすった。

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