幻滅ってなに ページ33
翌日の昼休み。僕は例のごとく中庭の日陰で横になっていた。
気が重い。
空が晴れているのが少しうざったい。
脱力感を覚え、寝返りも億劫になった。
……昨日、僕は気付いてしまった。
なぜ有力候補者たちが次々に事故に遭うのか。
なぜジャックは自分は狙われないと言ったのか。
なぜ寮長がわざわざ格下相手にマジフト対決を吹っかけたのか。
なぜ………サバナクロー生は誰も怪我してないのか。
答えはひとつ、今までの事故はサバナクロー生が仕組んだ事件だからだ。
今年こそ優勝だ、と寮全体が躍起になっているのは見てわかった。2年連続でディアソムニア寮に惨敗していることもセンパイから聞いて知った。
でも、勝つための算段が人を襲うことなんて、まさか思わないじゃないか。
首謀者はまだ確定していないが、少なくとも寮長は黙認している。じゃなかったらわざわざ格下である彼らを叩き潰すような真似はしなかっただろう。
あの試合は探りを入れさせないため。
あわよくば調査を止めさせるため。
昨日試合を止めたときの言い草からして、ジャックは知らなかった側か。どこかのタイミングで気付いていたのだろう。
このときばかりは怒りを通り越してむしろ冷静だった。
というより、諦めに近いんだと思う。
あァ、寮に戻りたくないな。
すると遠くから騒々しい足音が複数近付いてくるのを感じた。
目だけ向ければ、ラギーセンパイを追うエーデュースコンビにオンボロ寮の2人。
センパイの手にはマジカルペンが握られている。
重い腰を上げ、立ち去ろうとするセンパイのもとに歩を進めた。
『ラギーセンパイ』
「お、Aじゃないッスか。どうしたんスか?まさかコイツらの味方でもするつもりッスか?」
『まさか、アンタたちがそんな卑怯な手を使うとは思わなかったよ』
一瞬センパイの表情が抜け落ちた。
「卑怯?Aならわかるっしょ?そういう狡猾さがなけりゃ生き延びれねぇって」
『……今のテメェらに
百獣の王の気高さなんて欠片も感じられねぇわ』
似たような環境で育ったと言えど、生き延び方は根本的に違う。ラギーセンパイの言い分に共感はできても、この状況で適用されるのは理解できない。
冷めた表情のラギーとの間に大きな溝が見えた。
その日、僕は寮には帰らなかった。
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作者名:くろかは | 作成日時:2020年3月24日 15時