逃走ってなに ページ22
素早く低木の陰に身を隠し、息を殺した。
瞬間に足音が近付いてきて、ピタリと止まった。
音的に距離は約32フィート。気付かれたとして相手の方が出入口に近いから逃げ切れるかは微妙だ。
どうか、どうか早く去ってくれ。
「オイ何やっ」
『〜〜〜!!!!!!!!!!!!!』
「んむ」
ビビらすなよバカ野郎!!!!!!!!!!!!
何なんだテメェ誰だよ寮長かよフザケンナ!!!!!!!!!(強烈な安堵)
いつの間にか背後にいた寮長の口を心臓バックバクさせながら急いで塞ぎ、追っ手を確認した。そして超小声で手早く状況説明。
『…命の危機ですよォ』
「あれ〜?確かにここに入ったと思ったんだけどな〜…出ておいでクマノミちゃ〜ん」
聞こえてくる声に寮長も納得したようだ。
追っ手の名はフロイド・リーチ。ここ最近なぜか片割れそっちのけでめちゃくちゃ追っかけられる。理由は不明。名前は同室のセンパイに教えて貰った。
僕逃走は得意だけど如何せん体力がゴミカス。相手はオクナントカ寮と言えどパルクールを心得ている様子。こんな矛VS盾みたいな実験いらねェよ。
急いで目に入った植物園に逃げ込んだけど、これは愚策だった。日が差し込むから明るいし、下手したら退路を失うし、外からは丸見えだし。
どうしようか。
すると寮長の口を塞いでた手がガッと捕まれ、
「人がせっかく気持ちよく昼寝してんのに邪魔すんじゃねぇよ」
『ちょッ、声でか』
「そこにいたのかぁ〜」
『ミºッ』
にゅっと低木の向こうから恐れていたオッドアイが覗いて、体温が一気に下がるのを感じた。
寮長を飛び越えて即座に出入口を目指す。幸い僕の方が動き出しが早かったから、なんとか捕まらずにはいけそう。
が。
『寮長の人でなしィ!!!!!!!!!!!!!
僕は!!!絶対ェ!!!!忘れねェからなァ!!!!!!!!』
「うるせぇ」
そう叫び声を残して鬼ごっこが再開してしまった。
何故こうして追いかけられてるのか、何故僕は「クマノミちゃん」と呼ばれているのか、その辺はむしろ捕まったらわかるのだろうが、
本能が逃げろって言ってンのよ。
それは恐らく、彼の中に狂気を感じるからだ。下手したらブチ殺.されそう。
何とか撒いたことで事態は収束。ただし死ぬほど疲れて寮の前についた途端動けなくなってしまった。アドレナリンでどうにかなってたから。
結局、通りかかったセンパイが見兼ねて部屋まで連れてってくれた。
501人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くろかは | 作成日時:2020年3月24日 15時