洗礼ってなに ページ12
僕の所属するサバナクロー寮は文字通り弱肉強食。
知略と強靭な肉体、そして不屈の精神を備えた者が生き残れる世界だ。
みんなしていい体格だが例外だっている。僕と、ひとつ上のラギーセンパイ。彼は僕と同じくらいの身長だが、寮長のお気に入りという高い地位を持っている。
じゃあ僕は?
「よーお草食動物の新入生、お前"夕焼けの草原"出身じゃあなさそうだな?」
絶好の標的。
僕には彼らのような立派な耳も尻尾も筋肉もないし、言わずもがな学もない。
『そっすねェ、強いて言えばコンクリート育ちですかねェ』
「こんなひょろっちいし、既に包帯グルグル巻き」
『軟弱ですねェ』
いまも談話室で2人のセンパイに絡まれてる。周りにも何人かいるけどニヤニヤ笑ってるから実質1対複数。
別に向こうに不都合なことはしてないから殴られたりはしないだろうけど。ストレス発散でリンチとかないよね?さすがにないよね?
何を要求されるのかと身構えていると、入口の方から「オイ」と声をかけられた。
「1年囲んで何やってんだ?」
「りょ、寮長…」
「洗礼ってやつですよ!見るからに弱そうなんで…」
寮長タイミングナイスすぎるんだけど、ここで助けてくれるタイプではないのは昨日の軽い会話で十分に理解している。
「へー、じゃあお前何か俺らに見せてみろよ。」
『ふァい??』
「お前の価値は何か、ここで証明しろ」
ニヤリと笑いながらそう言うと、空いていたソファにドカッと座り試すように目を光らせた。
一瞬ポカンとしていたセンパイたちも囃し立て始め、通りがかったひとたちも何だ何だと集まってくる。
どうしよう。ジャグリングなんてやっても彼らの腹は満たされないだろうし、かといって他に何もやってこなかった僕に選択肢は少ない。
多分寮長は暇つぶしも兼ねて、学園長に言われたように気にかけてやる価値が僕にあるか見極めようとしている。
どうしよう、どうしよう…
ふと、走馬灯のように過去の記憶が駆け巡った。
_____以外価値のねェ愚図が!!_____
…なんだ、僕には
『__さァさァ、寄っテらっしゃイ見てらっしャイ』
僕は身体中包帯だらけでひょろっひょろ。
ここ談話室は3階にある。
『日々の出来事置いといテ、今宵息ヲ吹き返そウ』
窓のサッシに乗り、両手の人差し指を頬にあて、お客さんに最高の笑顔を。
『今日ノ目玉も
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作者名:くろかは | 作成日時:2020年3月24日 15時