29 ページ30
四六時中、ゼオンの魔力に包まれている状況が続く。ご飯を食べるとき、お風呂に入るとき、寝るとき。初日のように、好き勝手動かされることはないけれど。服の上から、もう一枚薄布を羽織っているみたいな感覚だ。
そして私の動きに合わせて、ゼオンの魔力も動く。動きの邪魔をするのではなく、緩やかに、穏やかに、肌に沿って。“こう動かせば何の問題もない”と、目に見えるように教えてくれる。
唯一、お役目の時間の時だけは、私に纏われているゼオンの魔力は無くなる。悪戯されるのは嫌だけれど、心許ないと思うのは何故だろう?
お役目の時間が終われば、ゼオンの元へすぐ向かう。彼の部屋を覗けば、窓辺に腰を下ろし、腕を組んで目を瞑っていた。
(寝てる?)
そっと近寄り、顔を覗き込む。ゼオンが寝ているところを見るのは初めて。こんなに近付いても、目を開けない。その様子を、じっと眺めていれば
「……いつまで見ているつもりだ」
『きゃっ!?』
言葉と共に片目を開き、ゼオンと視線が交わる。それに驚いて悲鳴が漏れた。
『い、いつから起きて……』
「さあ?いつだろうな」
『まさか寝た振りですか……?』
と質問を投げ掛けたが、クククッと喉を鳴らしているだけで答えはくれない。『またからかわれた……』と少しだけ拗ねていれば、彼から伸びてきた腕は腰に回り、片腕で抱き上げられる。
いきなりのことで『わっ!?何ですか!?』と声を上げたが、ゼオンは口角を上げているだけ。
そしてそのまま外へ体を傾け、重力に逆らうこと無く窓から二人一緒に落ちた。ここはガランの居住地。岩山─アルゴータ山─の中腹あたり。だから下は崖になっているわけで
『きゃあぁぁあ!!?』
遠くに見える地面、下から吹き上がる風は体を叩き付ける。耳につく風切り音。私は恐怖から耳を頭に付け、空いている両手をゼオンの首に、尾を彼の体と自身が離れないように巻き付け、目一杯しがみつくしかない。
18人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪丗(プロフ) - キキさん» こちらにまで来て頂き、ありがとうございます。こちらの小説更新はカメさん以下の速度になるかと思いますが、少しずつ更新していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。 (2019年1月24日 13時) (レス) id: b6a8bd3c6a (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - チェシャ猫が好きすぎて、こちらにも遊びに来たのですが…こっちもすごく面白いです!トレントの場面、ドキドキしました!どのキャラクターも皆、素敵ですね♪ファンタジーの不思議さやカッコよさがとても伝わってきます。無理なさらない範囲で、がんばってください! (2019年1月23日 22時) (レス) id: cc6696e063 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 雪丗さん» アドバイスありがとうございました!参考になりました! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 如月 唯奈さん» アドバイスが出来るかはわかりませんが、小説を読まさせて頂きます。読み終わりましたら、如月様の小説の方へコメント致します。少々お時間下さいませ。 (2018年12月12日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 私もファンタジーのオリジナル小説を書いているのですが、表現が上手くできません……何かアドバイスくださいっ! (2018年12月11日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪丗 | 作成日時:2018年11月22日 0時