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涙を浮かべながら逃げ出そうともがくと、私の足を掴むトレントの力は強くなって引き摺る勢いも増す。

『いやぁぁあ!!』

逆さ吊りにされた私の目の前には、トレントの顔である黒い目と口。ニタァッ!と歪んだ顔が目の前に広がる。

この場には私を助けてくれる、ガランもバレッタもアミィもいない。

『誰かっ……助けて……』

口から漏れる小さいSOSの言葉。それを嘲笑うかのように、トレントは私の体に自身の手である枝を巻き付けた。そして

『っ……うっ……!!』

ギリギリと絞めつけられる力に、小さく漏れる呻き声。苦しさに目を瞑ったら、頭に浮かんだのは

『……た…け、て……ぜ、おん……』

絞り出すように紡いだ言葉。その瞬間――

ブワッ!と一陣の風と共に、ザシュッ!という音が辺りに響いた。逆さに吊られていた私の体は、いきなり弛んだトレントの手から離れて宙に投げ出される。

地面に『ぶつかる!!』と痛みを覚悟し、目をギュッ!と瞑ったけど、痛みではなく暖かい感触に包まれた。

『げほっ!……けほっ……!』

顔を上げようとしたところで、急に入ってきた酸素に激しく咳き込む。頭の上から「ゆっくり息をしろ……」と言う、ゼオンの声が聞きこえて、彼の言う通りにゆっくりと呼吸を整える。苦しくて涙を浮かべたまま顔を上げた私の視界には、ゼオンの横顔が写った。

トレントを見据えるその顔には怒りが滲む。あまり感情を表に出さなかった彼が、怒り狂っていた。

ゼオンの体からは威圧的な魔力が膨れ上がり、手に持つ剣の柄はギシッ!と音を鳴らす。でも私を支える左腕だけは、優しく抱えてくれていた。

一振り。ゼオンが縦一線に振った剣は、風の刃となってトレントを襲う。そして瞬く間にトレントの体は二つに割れた。

動かなくなったトレントだったもの。木に宿っていた穢れが霧散する。

動かなくなったトレントを確認した所で、ゼオンは私を見下ろした。先程までの怒りは無かったかのように、眉を寄せて心配気な表情だ。そんな彼を見て私は

(今なにをしたの……?)

ゼオンが何したのか見ていなかった訳ではない。でも一瞬の出来事過ぎて、頭が追い付いていなかった。

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設定タグ:女主人公 , ファンタジー , オリジナル   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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雪丗(プロフ) - キキさん» こちらにまで来て頂き、ありがとうございます。こちらの小説更新はカメさん以下の速度になるかと思いますが、少しずつ更新していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。 (2019年1月24日 13時) (レス) id: b6a8bd3c6a (このIDを非表示/違反報告)
キキ(プロフ) - チェシャ猫が好きすぎて、こちらにも遊びに来たのですが…こっちもすごく面白いです!トレントの場面、ドキドキしました!どのキャラクターも皆、素敵ですね♪ファンタジーの不思議さやカッコよさがとても伝わってきます。無理なさらない範囲で、がんばってください! (2019年1月23日 22時) (レス) id: cc6696e063 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 雪丗さん» アドバイスありがとうございました!参考になりました! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - 如月 唯奈さん» アドバイスが出来るかはわかりませんが、小説を読まさせて頂きます。読み終わりましたら、如月様の小説の方へコメント致します。少々お時間下さいませ。 (2018年12月12日 0時) (レス) id: a6201812ee (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - 私もファンタジーのオリジナル小説を書いているのですが、表現が上手くできません……何かアドバイスくださいっ! (2018年12月11日 21時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪丗 | 作成日時:2018年11月22日 0時

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