継いで【オリジナル】

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Noside

遠い昔＿＿。

満月が淡く照らす断崖絶壁の頂きに、一人の男が佇んでいた。その男は人ならざる者。

白銀の髪に血のような赤い目。鋭い牙と爪を持ち、獣を思わせる耳と尾。

人々からは化け物・魔王と伝えられ、恐れられている存在。

その逆に精霊や妖精といった神秘な存在からは、≪幻獣王≫と崇められていた。




その幻獣王が見据えている先にあるのは、小さな里。その里は特殊な能力を持った一族が暮らしている。

その一族の特殊能力とは、世界に浮遊する目に見ることの出来ない穢れを見ることが出来、その“穢れを浄化する”ことが出来るのだ。

魔獣が生まれる前に浄化するのが、この一族のお役目。

その中でも、特別に強い力を持っているものが代々一人だけ存在する。その者は≪巫女≫と呼ばれていた。

巫女の能力だけは、魔獣になったばかりの者なら穢れを浄化し、元の姿にも戻すことが出来るという。




幻獣王が里を見据えている理由は一つ。その巫女に恋をしたからだ。

艶やかな黒髪に映える白い肌。華奢な体躯。長い手足。健康的な薄紅の頬に桃色の唇。透き通った海を思わせる碧眼。

人の姿に化け、何度となく里へ赴いた。時には遠く離れた地で手に入れた食物を持って。またある時は、一〇〇年に一度しか咲かないとされる幻の花を持ってなど。

幻獣王は巫女へ純粋な思いを告げ続けた。

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