Bouquet. ( ar×in shortstory )

＊ ページ6

in side .




自分から突き放した。

大ちゃんの幸せを願うなら、俺は邪魔だ。

これで良かったんだ。


大ちゃんが好きな人と付き合って、幸せになってくれたら。ずっと大ちゃんに執着していた俺も、いつの日か普通の幼なじみとして、友達として…


…大ちゃんの隣にいるのが俺じゃなくても…


ポタポタと、机が涙で黒く染まってゆく。


｢っ…いや、だ……だい、ちゃっ…｣


やっぱり無理だよ…
ずっと気持ちを隠して生きていくなんて…


…せめて、せめてこの想いだけは……



気づいたら教室を飛び出していた。

上履きも履き替えず、折角持ってきた傘も差さずに、必死で大ちゃんを追いかけた。

制服がビシャビシャに濡れて、きっとお母さんに怒られる。それでも…


｢だいちゃ…っ…大ちゃんっ…！！｣


｢…伊野、ちゃん…なんで傘…風邪引いちゃ…｣


｢そんなのどうだっていい…！！｣


数メートル先で、驚いた表情の大ちゃん。さっきまで怒ってたのに、今は俺が心配って顔してる。


…なんで、そんな顔するの…


…やっぱり駄目だよ、俺、大ちゃんがいないと…


｢…行か、ないで…いやだよ、大ちゃんっ…


…俺から…離れて、いかないでよぉっ…｣


…情けない…

年上のくせに、大ちゃんを守るって決めたくせに

涙が止まらないなんて…


しばらくして大ちゃんが口を開いた。


｢…なんで…

なんで伊野ちゃんが引き止めるの…？
さっきは突き放したくせに…｣


…そんなの決まってる。


だって、俺はきっと、ずっと…大ちゃんのことが…



｢……好き、だから……｣



…もうこれで最後かもしれない。

大ちゃんに引かれて、嫌われて、拒絶されて…
この関係は終わってしまう。

それでも、どうしても、心の奥底に閉まってあったこの想いを伝えたかった。


…我儘いって、困らせて、ごめんね大ちゃん…


方向転換をしようと、振り向いた瞬間だった。


後ろから温かい体温に包み込まれた。




.

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す