男性を魅了してしまう血鬼術にかかってしまったわけですが

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「それで、知らない人に声をかけられて。茶屋に誘われて、攫われかけた所を冨岡さんが」

「ちょっと待ってください」

「どうしたの？しのぶちゃん」

「茶屋に誘われたんですよね？」

「うん」

「どうしてそれで攫われるって話になるんですか？」

「えっ、だってそれくらいしか目的なくない？ああ、しのぶちゃんや蜜璃ちゃん相手なら、色恋沙汰かなって感じはするけど」


呆れて物も言えず、むしろ頭痛さえしてきて、しのぶは頭を抱えた。警戒心を失っている訳では無いので心配はないが、鈍感すぎるのも如何なものかと考える。


「…………まあいいです、先に進んでください」

「？それでね、私が必死に抵抗してたら、冨岡さんが来てくれて！犯人が諦めてどっか行った後に、お礼を伝えたら、何か、あ、愛してる…とか言われて、それで」


ぷしゅーと音がしそうなほど赤くなり、Aは口を閉じた。照れ臭さが頂点に達したのであろう。しのぶはその後に接吻をされかけたのだと予想して、事情を聞くのを止めた。

「なるほど」

「ね？可笑しいでしょ？冨岡さん本当に大丈夫なのかな？」


しのぶは冨岡が別に何か変な物を食べたとは露ほども思っていないので、これは何か精神的作用のある薬を飲まされたか、血鬼術ではないかと疑った。少なくとも、あの寡黙な男が往来でそのような積極的な行動に出るとは思えなかったからだ。


「そうですねぇ」

「食べたもの吐かせた方がいいのかな？」


拳を握り締める友人に、急いで悪い物を食べた訳では無いだろう、と弁解してから、しのぶは再び思考を巡らせる。

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