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「しのぶちゃん!冨岡さんが変!」
そう叫んで部屋に駆け込んできた同僚兼友人に、胡蝶しのぶは優しく声をかけた。表情こそ笑顔であったが、Aが扉を勢いよく開けた衝動で手元が狂ったことに対する怒りが、声に微かに込められる。
が、それに気づくAでは残念ながらなく、しのぶもそのような質なのは分かっていたため、そのまま言葉を続ける相手に、特に不快感は持たなかった。
「なんかいきなり私にせ、接吻してこようとして…!」
「…?一体どういう状況なんですか、それは」
流石のしのぶも、その頓珍漢な状況説明に目を見張る。Aは少々頭が足らないことがあるが、真っ直ぐで嘘をつかない素直な少女であることを知っているため、疑うことはしない。
「分かんないよ…!」
「それで、貴女は驚いて…あの、冨岡さん生きてます、よね?」
しのぶがAが背負う意識を失った男性の名を呼び、その生存を確認すれば、飛び込んできた少女は困惑そのままに勢いよく首を縦に振った。
「生きてるよ!大丈夫!ただ、うん、私が手刀を首に入れたからこうなったんだけど…」
取り敢えず実験室にある寝床に横たえることを提案すれば、Aはそれに従い冨岡を下ろした。相当綺麗に入ったようで、そうされても冨岡が起きることは無かった。
「ねえ、冨岡さん大丈夫かな?もしかして頭がどっかおかしくなっちゃったとか…」
最早泣きそうになっている友人を落ち着かせるために、しのぶはつとめて冷静な声色で話す。
「大丈夫ですよ。きっと、何かおかしな物でも食べちゃったんです」
笑ったままに、存外失礼な冗談を口にするが、相手は超ド級の天然である。それに納得したようにAは頷き、寝たままの冨岡の頬を、「うっかりさんですね」と嬉しそうにつついた。
しのぶは「冗談を言う相手を間違えましたかね」と思いながらも、何が起こっているか状況説明をAに求める。
「一体何処で冨岡さんに会ったんですか?」
「えっとね、はづき屋の近くだよ」
「これお土産ね」と、手渡されたはづき屋の印が付いた風呂敷を有難く受け取りながら、しのぶは先を促した。
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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時