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「雲の呼吸、壱ノ型…畝雲綴り!」
少女はそう呼吸を繰り出す。途端、斬撃がまるで蛇のように畝り、相手を包み込んだかと思うと、そのまま収束し、鬼の首は呆気なく落ちた。
少女は塵になり始めていることを確認してから、小さく息を吐く。
「ふぅ。これで終わりっと」
今回の任務は、ある村に巣食った鬼の討伐だ。一ヶ月前辺りから外部との接触が途絶えた、山の麓に位置するとある村。途絶える前に、隣村の人間が、真夜中にその村に侵入する異形の何かを目撃したため、鬼による仕業であるという判断が下され、鬼殺隊員が派遣されたのだ。
今回の任命された隊員…雲柱であるAAが村に着いた時には、中は酷い有様だった。死体は無いものの、そこらかしこに、血痕が見えた。生き残っている者に話を聞けば、村の多くの男達がとある一人の女性を取り合い死闘にまで発展してしまったらしい。
亡くなった者には、実際その女性に恋慕した人間だけでなく、その取り合いを止めようとして殺されてしまった者もいるようだ。
そこで、その渦中の女性に会ってみると、その人自身もかなり弱っており、付き人がいないと、今すぐにでも命を絶ってしまいそうなほどであった。家屋に入ってからも、外からはその女性を求める、最早怒声と取れる声が響く。
多くの者が殺されているにも関わらず、死体が見当たらないことから鬼の存在を明確に認識し、見つけ今しがたその首を跳ねたのだ。
「くそぅ、くそぅ…!」
「彼女に恋した男性達を喰ったのはお前?」
「そうだ!それがどうした!まるで光にたかる虫のように集まって来よって…笑えたわ!」
その言葉に、Aは頭が沸騰するのを感じた。人の心を操っておいて、悪びれもなく開き直るどころか、人を蔑むその態度に酷く腹が立ったからだ。
「分かった、もういい。早く死ね」
「っ!くそ!」
そう叫び、女の鬼はかっと目を見開いた。そこから謎の光が漏れ出し、Aは逃げるように目を塞ぐが、一瞬その光を見てしまっていた。
「何をした!」
「ふふ、ふふふふふ。お前も苦しめ、苦しんでそして…死ねばいい」
そんな呪詛を吐いたままに、完全に塵となる。Aは一分ほど目を塞いでいたが、痛みなどはなく首を傾げた。
「何だったんだろう…?」
そう思いつつも、元凶であろう鬼が消えたことで村がどうなったのか確認するために、屋外へと出た。
飛んでもない『呪い』をかけられているとも知らずに。
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もみじ - めちゃめちゃ面白かったです!! (2022年8月1日 19時) (レス) @page30 id: 32f65dbc25 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - ななしさん» お読みいただきありがとうございます。今でも反応をいただいており、私としてもお気に入りの作品ですので、そう言っていただけて嬉しい限りです。もしまた機会があれば、読んでいただけましたら幸いです。 (2022年4月9日 0時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 面白くて一気読みしました!語彙力が凄くて羨ましいです...!シチュエーションも神でした!これからも応援しています!! (2022年4月2日 17時) (レス) id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
ハッシュタグ(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 喜んでいただけて良かったです!リクエスト本当にありがとうございました…! (2020年10月22日 11時) (レス) id: bcf3124c84 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - いいいい伊黒さんかっこいい!!!です!\(^o^)/伊黒さんは、私の推しなんですが、こんなにかっこよく書いていただけて嬉しいです!!(*´ω`*)後、夢主ちゃんがかわそう…でもなんかすごいです!(語彙力)感情が無いようであって。凄く、本人にあってると思います! (2020年10月22日 8時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月30日 19時