4 我妻善逸 ページ5
眠い目蓋を擦りながら、通学路を重たい荷物を肩に担いで歩く。横を通り過ぎるクラスメイトがかけてくれる挨拶に、あくび混じりに返しながら門につくと、風紀委員が制服チェックを行なっていた。まだ委員の姿は見えないが、周りの生徒がざわついたため、あることが分かった。
自分が規則を破っているとは思わなかったが、一応道の端に立ち止まって身だしなみを確認する。ピアスといった類のアクセサリーは付けていないし、ワイシャツのボタンも開けすぎていない。
よし、これなら大丈夫でしょ。
そうして門に入り、風紀委員の姿をその目にした時、私は思わず立ち止まってしまった。確かに、胡蝶様、炭治郎くん、冨岡様と続いたら、他にも誰かしらいるだろうな、とは思っていたが、皆ここの関係者ってそれってどうなの?
バインダーを持ちそこにペンで書き込んでいたのは、我妻善逸くんだった。物凄い不服そうな顔をしているあたり、自分から立候補して風紀委員になった感じではない。私は動揺を押し隠して、横を通り過ぎる。
「あの、そこの三年生の先輩!」
「わ、私?」
「そうです。…なんか物凄い心臓の音しますけど、大丈夫ですか?」
ひょえー!そうだ、この子すごい耳がいいんだった!それは今世も変わらないのか。
どうやら、音で動揺が伝わってしまったらしい。しかし、それは不審に思われたとかではなく、体調不良を疑われているようだった。
「体の調子はすっごくいいから大丈夫!…です。お仕事中にすみません!」
「えええ、本当に大丈夫ですか?まあ、女子に優しくするのが俺のモットーなので、お気にならさず」
良い顔でこちらに親指を立ててくる。私も釣られてそれを返せば、溶けそうな笑顔を向けられた。そのまま善逸くんは仕事に戻る。
私は背を向けて校舎に向かって歩き出す。通学する生徒の中に、前世の知り合いを見つけられないものかと、目を凝らしながら。
後ろでは、規則違反の生徒に対しての、困ったよう善逸くんの声が聞こえた。
(女性に優しく委員の仕事を全うする後輩との話)
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おにゃんこ(プロフ) - コメント失礼します。私この作品大好きです!これからも頑張ってください (2020年2月14日 17時) (レス) id: efb665c293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハッシュタグ | 作成日時:2019年11月14日 18時