検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:111,140 hit

7話 ページ7

「……………っA……」



走ったせいで呼吸も荒いままだったけれど。そんなこと厭わず気づけば彼女に話し掛けていた。

Aは俯きがちだった視線をゆっくりと上げた。すっかり垢抜けたけれど、あの頃の優しい面影はそのままだ。



「僕だよ、無一郎。覚えてる?」



ここで僕は「無一郎!?」と驚く反応を待っていた。
久しぶりだね、あの時はごめんね、とあの頃の話を笑い話にしてくれると思ってた。

久しぶりの偶然の再会をカラカラと笑いながら喜んでくれると。



けれど、彼女の反応は。
想像とは正反対のものだった。



「……どなた、ですか…?」



ヒュッ、と息が詰まった。
目の前が漆黒に塗り潰された。サァッと血の気が引いていくのがわかった。

鏡があるわけじゃないから自分では見えないけれど、きっと今の俺は顔面蒼白になっているだろう。



覚えてない…?僕のことを、覚えてないの…?

小さい頃からずっと一緒にいたのに?毎日毎日馬鹿話して、笑い合っていたのに?

そんなのおかしい。いくらなんでもおかしすぎる。



「…君は、Aだよね?蘭堂Aだよね?」



Aは不思議そうな顔をした。まるで蘭堂Aという人物なんて聞き覚えがない、とでも言いたげに。

そして少しだけ申し訳なさそうに眉を下げると言葉を紡いだ。



「私は雨鈴(あますず)Aです。人違いではありませんか?」



嘘をついているようにはとても見えなかった。
心底不思議そうな顔をしていた。



…人違い?


そんなわけない。ずっとずっと一緒にいた人を間違えるほど、僕は落ちぶれていない。

それに“A”っていう優しい響きの名前だって同じだ。こんな偶然があるわけがない。


記憶の中の彼女の姿だって鮮明に思い出せる。
間違いなく今僕の目の前にいるのは、僕が恋していた蘭堂Aという人物だ。



でも、目の前の彼女は自分のことを“雨鈴A”と名乗った。

“蘭堂A”とは別人だと。

8話→←6話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (285 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
161人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。