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30話 ページ30

「守った……?」



どういうことだ。確かAは事故と言っていなかったか。

頭の中がショート寸前だ。あまりにも情報量が多すぎる。



「あの日、卒業式の日。私とAは夜に逃げようと思ってたの。

……でも、あの人にそれがバレてしまって……。怒り狂ったあの人はビール瓶を手に持って私を追い掛けてきたの。パニック状態で助けを呼ぶこともできなくて、ただただ逃げようとした。でもすぐに追いつかれて、頭上でビール瓶を振り上げられた。殺されるって、そう思った瞬間。

Aが、Aが私のことを庇ったの。それで頭を思いっきりビール瓶で殴られて血を流しながら、倒れ、て……。」



Aのお母さんはガタガタと震え出した。その時の出来事が頭の中でフラッシュバックしているのかもしれない。


相当なトラウマだろう。自分を庇った娘が頭から血を流して倒れる瞬間を目の当たりにしたら、誰だってこうなるはずだ。



「それで、それで……脳に……。」

「……言わなくても、大丈夫です。その先は…わかりますから。」



Aのお母さんはAが記憶を失くしたのは自分のせいだと思っているんだろう。

きっと今にも罪と後悔の念に押し潰されそうなんだ。



「……それで、離婚が成立したのって…。」



「……Aが血を流しながら倒れて、流石にまずいと思ったのかあの人は逃げたの。だから急いで救急車を呼んで、なんでこんな怪我を負ってるのか聞かれて…私も全部正直に話したの。今までのことも。警察の人も来ていたわ。

私にもAにも今まで受けていた暴力の跡が残っていたから…あとは病院の診断書があったから…あの人は呆気なく逮捕されて、離婚が成立したの。最初から、こうすれば良かったのに…そうすればAがあんな目に遭わなかったのに…。

それで…万が一のことを考えて。あの人が出所した場合、見つかる可能性を恐れて。誰にも何も言わずに私たちは越したの。ごめんなさい、ごめんなさい…何も言わずにいなくなって…。」



Aのお母さんが悪いわけじゃない。きっとその頃はAを守るって意思が強すぎるせいで盲目になっていただけだ。

それでも、Aのお母さんの罪の意識が消えるわけじゃない。



僕は、なんて言葉をかければ良いのかわからなかった。

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白霞(プロフ) - いちごアメさん» 応援のお言葉ありがとうございます。面白いとも言って頂けて嬉しい限りですございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月19日 17時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
いちごアメ - とっても面白いです!!これからも頑張ってください (2020年8月18日 21時) (レス) id: 77a7bd0b14 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - つぶやき星のつぶやき女さん» そんな風に言って頂けて光栄の極みでございます!素晴らしい作品だなんて畏れ多い…!最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月18日 12時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
つぶやき星のつぶやき女 - す、素晴らしい!泣きました。とても面白い、悲しい?ような気がして面白かったです。(伝わらないような気がする。語彙力無くて、すいません!)とにかく素晴らしい作品でした。お疲れ様でした。 (2020年8月17日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - くれーぷさん» そのように言って頂けて嬉しい限りです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月26日 0時

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