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佐々木さんが事務所に戻ってきたのは、10分後だった。
「佐々木さん、お客様は……」
佐々木さんが事務所の扉を開けるなり、私は立ち上がって佐々木さんに駆け寄った。
「大丈夫よ。ちゃあんと、帰っていただいたから。それよりA、大丈夫だった?怖かったでしょう」
佐々木さんが上手く対応してくれたのだろう。
佐々木さんやうらたさんに迷惑をかけてしまったことに、私は罪悪感が胸の中に広がった。
「……すみません、ご迷惑おかけして」
「ああいうお客様、たまにいるのよね。酔って女の子に絡む人。Aが悪いわけじゃないんだから、気にしないの。ああいう時は、責任者を呼んできますっていって逃げていいんだからね」
「……はい」
「よし。それから、うらたくん」
私が返事をすると、佐々木さんはうらたさんのほうを向いた。
声音は、すこし厳しい。
「自分のやった対応、間違っていたのは分かるよね?」
「はい」
「酔っ払い相手にムキにならないこと。うらたくんも、まだ若いから仕方ないかもしれないけどね。でも、真っ先にAを庇ったのはかっこよかったわよ」
「……すみません、でした」
「わかったならそれでよし。じゃあ、2人はもう、今日はあがっていいから。気をつけて帰りなさいよ」
佐々木さんは、空気を変えるようにパンッ、と手を叩くと、明るい声でそう言った。
「え、でも……」
これ以上、お店に迷惑をかけるのもしのびない。
「もう、閉店時間だし。掃除だけなら2人抜きでも大丈夫よ。怖い思いもしたんだから、今日くらいゆっくり休みなさい」
佐々木さんはゆっくりと、でもはっきりとそう言った。
彼女が、心配してくれているのがわかり、素直に頷く。
「はい。……ありがとうございます。お先に、失礼します」
「すみませんでした。お先に失礼します」
私とうらたさんは、佐々木さんに頭を下げると、彼女は「大丈夫よ!次からもまたお願いね!」と明るい声で言った。
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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時