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「お前、なんかあったの?」


豚のしょうが焼きを頬張りながら、うらたさんが聞いた。


今日も今日とて、彼は予告もなしにふらりとやってきた。


その上、ちょうど私が夕飯を食べようと調理し始めたときにやってくるものだから、あれよあれよという間に2人分の夕食がテーブルに並ぶこととなったのだ。


「………とくに、なにも。どうしてですか?」


「なんかお前、変な顔してる」


「変な顔?」


「そ。こーんな感じで」


うらたさんは箸を置いて、両手で自分の顔を抑えて思いっきり下に引っ張って変な顔をした。


「そんな顔、してないですってば!」


実を言うと、坂田くんとの一件があってから、彼のことで頭がいっぱいになっているのは確かだった。


気づくと坂田くんのことを考えている自分がいる。


プラネタリウムに行った日、少し震える手で、告白されたことを思い出す。


坂田くんの瞳は、どこまでも真っ直ぐで、嘘を言っているようには思えなかった。


「もういちど、振り向かせてみせる」


彼は、はっきりとそう言った。


それはつまり、私がいま、坂田くんに気持ちが向いていないことを指している。


じゃあ、私の気持ちは、いったいどこに向いているんだろう。



「……ぃ……おい、A」


「へ?あ、すみません!なんですか?」


考え込んでしまっていた私を、うらたさんは怪訝そうな顔で見つめていた。


「やっぱお前、なんか変」


彼は呆れたようにため息をついて、頭をかいた。


「お前さ、なに悩んでるのか知らないけど、少しは俺のこと頼れば?」


「え?」


「俺だって、いちおう先輩だし、男だし。かわいい後輩に頼られたいとか思ってんのー」


言葉と同時にうらたさんの手が伸びてきて、私の頭の上に乗る。


その手はそのままガシガシと乱暴に頭をかきまわした。


「わ、ちょっと!うらたさん!」


乱暴に撫でられながらうらたさんを見やると、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いていた。


いまの言葉が、彼なりの優しさで、そしてこの手は照れ隠しであるということがわかると、なんだか笑いが込み上げてくる。


先輩相手に言うのもなんだが、この人は、なんて可愛らしい人なんだろう。


そんなこと言ったら、頭の上に乗っているうらたさんの手が拳骨に変わることは間違いないので、心の中に留めておいた。


うらたさんは、私が笑っているのに気づくと、


「生意気なやつ」


と言って、眉を下げて笑った。



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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時

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