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私服だからか、大学生になったからなのか、坂田くんはますますかっこよくなったような気がした。


「同窓会はいいの?」


「もう、終わるとこだったから、大丈夫」


坂田くんは、私を捕まえた手を話そうとしなかった。


「なあ、ちょっとだけ、話さへん?」


「……うん」


私は俯いて頷くと、駅を出た。


坂田くんは私の腕を掴んでいた手をするりと下げて、私の手をゆるく握った。


それはかすかに震えていて、坂田くんの緊張が伝わってくる。


振りほどくこともできなくて、されるがままに私は坂田くんに手をひかれて歩いていく。


半歩先をあるく坂田くんの背中は、学生服を着ていた頃よりも男っぽく見えた。


「ちょっと、ここで座らへん?あんまり遠くなると、帰るの大変やし」


坂田くんは、ほんとうに少し話すだけのつもりらしい。


ファミレスとか、長い時間入れる場所を選ばなかったのは、そのためだろう。


私は頷くと、公園の隅にある2つあるブランコのうちの右側に腰かけた。


夜の公園と言えど、なにか上着を着ていないと肌寒いなんていう時期はもう終わっている。


坂田くんは、そばの自動販売機に近寄り、小銭を入れた。


ガコンと音がして、彼は自販機の取り出し口に手を差し込んで、缶飲料を取りだした。


「なに買ったの?」


隣のブランコに腰をおろした坂田くんが黙って持ち上げたのは、水のペットボトルだった。


彼はそれを簡単に開けると、ひと息に半分ほど飲み干した。


公園は薄暗くて、坂田くんの赤い髪だけがやけに映えて見える。


「……元気にしとった?」


「うん」


ぽつりぽつりと、呟くように坂田くんは言った。


「あの、さ」


「ん?」


顔を上げると、坂田くんがこちらを見つめていた。


その瞳は、不安そうに揺れている。


「俺、ずっとAちゃんに会いたかったんよ」


彼は自信なさげに伏せた目線をまた私に戻した。


「俺、ずっと謝りたかった」


ほんとに、ごめん。震えた声で坂田くんは言った。



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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時

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